研究課題/領域番号 |
22243029
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮島 英昭 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60182028)
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研究分担者 |
広田 真一 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (40238415)
久保 克行 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (20323892)
蟻川 靖浩 早稲田大学, 商学学術院, 准教授 (90308156)
青木 英孝 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (90318759)
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, その他の研究科, 准教授 (60454469)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ファイナンス / 企業統治 / 内部組織 / 所有構造 / 市場競争 |
研究概要 |
本研究の目的は、先進諸国における多様なガバナンスを分析する新たな理論、実証的枠組みを構築し、国際比較を通じて日本の企業統治の特性を解明する点にある。 具体的な課題は、以下の2点であった。 1)平成(複合)不況と世界経済危機を経た日本の企業統治の特性理解と再設計 2)ビジネスモデル(経営戦略)を明示的に考慮した企業統治と企業パフォーマンスの関係の解明 本年度は、前年度に引き続き、それぞれのテーマについて、基礎的なデータの収集、必要な変数の構築を進める一方、それに基づいた実証分析を進めた。このデータをもとに、宮島・蟻川は、R&Dと企業統治の関係を解明した論文の作成を継続的に進めた。また、蟻川は、企業活動基本調査(経済産業省)を利用して、企業のIPOの選択の分析を進め、第1次分析を終えた。宮島は、研究協力者・片倉とともに、事業の成熟度とコ-ディネーションの必要度という2つの新たな変数を開発し、持株会社の選択の分析を進めた。また、宮島・齋藤は、RIETIと協力して実施した、企業統治のアンケ-ト調査の結果を公刊した。平成25年度は、所有構造の分析に関して、大きな前進があった。宮島は、内外機関投資家の増加の要因とその効果に関する分析を進め、World Business History Conferenceなどの機会で報告した。また、宮島、Franks (LBS)、Mayer (Oxford)との共著による日本企業の所有構造に関する進化の論文が採択された、宮島は、企業集団の役割の再検討に関して、研究協力者の中村政男(UBC)と株式ポートフォリオの観点から接近し、同氏が来日中(2013年10月)に集中して作業を進めた。また、企業グル-プについては、宮島が、研究協力者の牛島(青山学院大学)、小川亮(早稲田大学商学研究科博士課程)とともに、内部資本市場の効率性の分析を課題に、その基礎デ-タを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ整備では、分析にとって必要となる変数(所有・資本・取締役の構成・買収防衛策・持株会社の設立・子会社(上場と完全子会社化)・IPO)につき、必要なデータを構築できた。また、従来の水平・垂直を超えた事業上の関連を示す指標(事業間の調整必要度などの変数)を開発できた点も前進であった。さらに、株式所有について、新たな構築を目的とした投資家の時間的視野を考慮に入れ、保有比率の捕捉については、データの収集と変数の基本的デザインを確定することができた。成果面では、企業統治構造と戦略・組織選択関連の分析に関して、公開・非公開の選択、M&A、組織の分権化の効果、持株会社や完全子会社化の選択、内部資本市場の機能などについて、所期の進捗を見た。統治構造の進化についても、株式所有構造の進化、社外取締役の選任の分析、日本企業の経営姿勢と統治構造との関係など、多くの側面について成果を上げた。特に強調すべきは、20世紀の日本企業の所有構造に関する分析が、Review of Financial Studiesに採択されたことである。同論文は、少数株主の投資を促進する信頼を維持する制度(institutions of trust)に注目し、所有構造、エクイティファイナンスとの関係を分析しているが、この概念と分析手法は、対象時期、あるいは、地域を変えて応用することが可能であり、今後、その手法を、2000年代の日本、あるいは、国際比較にも応用することができる。
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今後の研究の推進方策 |
計画最終年度である本年度は、データ構築面では、これまで構築してきた財務、企業統治、組織・戦略の変数を直近まで延長・整備する一方、昨年度より開発に着手した投資家の時間的視野を考慮に入れ所有構造の変数を整備する。さらに、取締役会の構成に関して、単に、社外取締役の人数、属性のみでなく、取締役会の性格(マネジメントボ-ドとモニタリングボード)を捕捉する変数の開発を目指す。内部組織問題としては、企業の専門職(財務・法務専門家)の養成に関して、養成か外部調達(make or buy)の開発を試みる。 分析面では、これまで進めてきた、社外取締役、内外機関投資家などの企業統治の特性が企業戦略(M&A、R&D、財務政策、IPO)とパフォーマンスに与える影響の分析を引き続き継続する。また、組織選択に関しては、持株会社の選択について、成果公刊を目指す。さらに、近年の環境変化を考慮して、CSR活動と企業統治の関係、種類株の設計、大陸欧州で見られる長期保有にコミットする株主優遇制度の日本への応用可能性、会社法改正に対応した監査役の役割の再検討などの分析を進める。 以上の成果は、本年10月末に予定される本プロジェクトとの共催で行われるブリティシュコロンビア大学でのシンポジウムで報告する。具体的には、宮島・蟻川のR&Dと企業統治の関係を解明した論文、宮島・中村のポートフォリオ投資の観点から見た企業集団の役割、宮島・保田の外国人株主の役割、宮島・小川・牛島の内部資本市場の効率性に関する論文などが報告される予定である。その成果は、英文誌に投稿する一方、テクニカルな部分を削除し、政策的インプリケ-ションを明示した日本語版を、RIETI(独立行政法人経済産業研究所)とも協力しながら、単行本として公刊する計画である。
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