研究課題/領域番号 |
22243035
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
北村 敬子 中央大学, 商学部, 教授 (70055242)
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研究分担者 |
石川 博行 大阪市立大学, 経営学研究科, 教授 (60326246)
上野 清貴 中央大学, 商学部, 教授 (90140631)
梅原 秀継 中央大学, 商学部, 教授 (40282420)
齋藤 真哉 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 教授 (40215538)
吉見 宏 北海道大学, 経済学研究科, 教授 (90222398)
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キーワード | 公正価値 / 割引現在価値 / 企業会計制度 / 有用性 / 会計利益 |
研究概要 |
本年度は、前年度から継続して公正価値の概念整理等のテーマに取り組むとともに、個別の会計処理における公正価値測定や、実証的研究の観点から検討を行った。検討の内容は、主に『公正価値測定の意義とその限界最終報告書』にまとめており、その概要は以下のとおりである。 個別の会計処理における公正価値測定については、金融資産、事業用資産、負債、損益、連結の各会計を取り上げ、それぞれについて公正価値測定を適用する意義と限界について検討を行った。この結果、測定対象の性質や特徴に応じた公正価値測定の適否を明らかにした。例えば、株式といった金融資産であれば公正価値測定が適する状況があるものの、事業用資産や負債等では、公正価値の概念と会計基準における測定方法との不整合の問題や、経営者の恣意的な測定によって信頼性が損なわれる可能性があること等の限界があることを指摘した。 実証的研究の観点からは、まず現在までの実証研究による公正価値測定の評価をサーベイした。この結果、観察可能な市場価格による公正価値測定には問題点がみられないものの、観察不能なデータに依拠する経営者の主観的な公正価値測定は、利益の質を毀損する可能性が認められた。また、退職給付会計を取り上げて、現在価値を測定する際の割引率等の決定要因を検証し、経営者の裁量によって決められていることを明らかにした。 さらに、公正価値で測定された項目に対する監査について検討を行った。この結果、公正価値の監査にあたって、監査人に対する教育やガイダンスを提示する必要性等があることを指摘した。 以上の結果から、公正価値には有用性が認められるものの、特に経営者の見積りによらざるをえない場合には公正価値測定の適用や公正価値情報の利用には慎重になる必要があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
総論の検討を中心とした前年度の検討結果を踏まえ、今年度は各論の検討を計画どおりに実施することができた。また、今年度までの検討結果から、最終年度である来年度において、課題として残されたテーマの確認と本研究の最終的な結論をまとめるための道筋を整理することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までおおむね順調に研究を進めており、研究を推進するにあたって特に対応が必要な大きな問題点は生じていない。そして、来年度は最終年度にあたるため、今後は最終的な結論のとりまとめに向けた研究の推進を図る。具体的には、各研究者の研究結果を総合して有機的に結び付けるため、研究代表者および分担者を中心に適宜研究会を実施し、意見交換を行う。また、今年度までに残された研究課題については、来年度の早い段階で担当の研究分担者が検討結果を示すことで、最終的な結論へ織り込む。
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