岡山孤児院は石井十次によって1887年創設されるが、アメリカン・ボードによる全面的な支援によるものであった。また、石井はその孤児救済事業を展開するうえで、ジョージ・ミュラー、救世軍、ドクター・バーナードに実践上のモデルを見出していった。明治30年代には、寄付金募集の方法として慈善音楽幻燈隊を組織し、全国を巡回、さらに韓国、台湾、清国、ハワイ、アメリカにまで広げていった。 本共同研究は、以上の石井による岡山孤児院経営の国際性と開拓性に着目するものであった。とくに、バーナードホームと岡山孤児院の実践内容の比較研究を柱とした。また、これまでの岡山孤児院研究と石井十次資料館所蔵資料の整理目録化を継続した。最終年度となった今年度の研究成果は以下の通りである。 『石井十次資料館研究紀要」15号を本年度も継続して刊行した(8月)。ここに3点の論文を掲載した。また昨年度、バーナードズの関係者を招聘して実施した石井十次セミナー「石井十次に影響を与えたバーナードホームと現在のバーナードズ」を内容報告した。菊池義昭、細井勇解説編集で『編集復刻盤 岡山孤児院新報』全5巻(六花出版)を刊行した(6月)。5冊目の資料目録となる『石井十次資料館蒐・所蔵資料仮目録 簿冊文書の部高鍋図書館所蔵』を刊行した(10月)。石井十次資料館所蔵の写真記録を整理し『石井十次資料館蒐・所蔵写真集』を刊行した(10月)。科研費成果報告書の纏めのための研究会を8月宮崎県児湯郡木城町の石井記念友愛社で開催し、最終的な研究成果報告書を『石井十次資料館研究紀要』別冊Ⅲとして刊行した(3月)。ここには合計12点の論文を掲載した。バーナードホーム関係4点、アメリカン・ボード関係1点、救世軍関係1点が含まれている。
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