研究課題/領域番号 |
22243043
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 むつみ 慶應義塾大学, 環境情報学部, 教授 (60255601)
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研究分担者 |
岡田 浩之 玉川大学, 工学部, 教授 (10349326)
酒井 弘 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50274030)
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キーワード | 音象徴性 / 語意学習 / 語彙発達 / 日本語教授法 / コミュニケーション支援 |
研究概要 |
これまでの研究では記号としてのことばと意味を結び付ける最初の足がかりが何なのかについては明らかにされていない。言語発達の中で、子どもはどうやって最初に音と意味の対応関係を理解するのだろうか。言語学習の基盤となる能力の中で特に重要な能力として発達心理学、認知心理学、脳神経科学の分野で最近注目されるのが、音と意味の間の関係(音象徴性)を感じ、これを足がかりとして新しい語を学習していく能力である。本研究は「ヘレン・ケラーの問題」である、乳児がどのようにして最初に言語の音声ラベルと意味を結びつけるのかを明らかにし、そこからADS児、日本語L2学習の語意学習への示唆を得ることを目的とし、脳波実験を継続し分析を進め、音と対象の間に対応がある場合のERPの分析を進めた。2)語意学習における音象徴性の役割 14ヶ月における音象徴性の役割を検証した。3)養育者の子どもへの語りかけと幼児の発話における擬態語使用の関係 前年度の誘発発話実験のデータ収集を継続する。養育者の発話、子どもの発話とも、全発話量中の擬態語の割合、擬態語の種類(慣習的か創造的か、音の直接模倣か感情表現を含むかなど)、発話中の擬態語の音韻/音響的特徴などを観点から質的に分析し、MDSやMLAにより解析しる。4)音象徴性を感じる神経基盤とその起源 聾者を対象に、音象徴性を感じるメカニズムの言語普遍性について検討する。5)日本語L2学習者における擬態語理解困難の原因の同定と教授法の開発 前年に調査した擬態語の音象徴性が、日本語母語話者と学習者による新奇擬態語の事象へのマッピングにどのように影響を及ぼすか調査し、L2学習者のための擬態語学習プログラムを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
音象徴に関する幼児の脳波データを既に収集済みであり、語彙発達過程のデータも収集中である。現在、L2に関するデータを収集中であり、日本語教授法への効果的な還元法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
ADS児についてのデータが未収集であり、今後データ収集・分析を迅速に行う必要がある。また、母語話者と学習者のマッピングのパターンがどの点で一致し、どの点で乖離するかについても調査を進める必要があり、先行する調査結果をもとに、非母語話者に対する擬音語・擬態語教授法への示唆を検討していく。 今後は、音象徴性が語彙発達に対し果たす効果をより一層解明すべく、多角的なデータ分析を進めていく。
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