研究課題
子どもは目覚しい速度で効率よくことばを学習する。その背後のメカニズムについて、ことばと意味を結び付ける最初の足がかりが何なのかについてはまだ明らかにされていない。子どもはどうやって最初に音と意味の対応関係を理解するのだろうか。言語学習の基盤となる能力の中で特に重要な能力として最近注目されるのが、音と意味の間の関係(音象徴性)を感じ、これを足がかりとして新しい語を学習していく能力である。本研究は乳児が生得的に持つ複数の感覚モダリティを統合する能力により、言語の音と対象の間にある音象徴性を検知し、ことばと対象の間の指示関係を自発的に結び付けることで言語音の単位である単語が世界の対象を指示するという洞察を得ることが単語学習に大きな役割を果たすという仮説を検討した。この仮説を確かめるため、前言語期の11ヵ月児に対し、音と対象の間に音象徴性が高い組み合わせと音象徴性がない組合せではどのような脳波が観測されるのかを調べた。すると音と対象があわない組み合わせに対し、乳児は成人では意味の逸脱を検出したときに観測されるN400という特徴的な脳波パターンを示した。しかし、成人に対して11ヵ月児と同様の提示を行ってもN400は観測されなかった。さらに、養育者が子どもに対する語りかけをする発話中の擬態語の音韻/音響的特徴などの観点から分析したところ、2 歳児に対しては、養育者は単なる呼びかけとして、即時的に擬音語を用いる場合が多いのに対し、3歳児にはより広範で類似した行為を表現するために用いており、他の語彙同様に文中に統語的に組み込む形で用いられることが分かった。つまり、音象徴性は語彙学習の当初において乳児に「語とは何か」を気付かせるだけではなく、その後も言語という抽象的な記号体系を子どもがデコードするための手がかりとして長期に亘り貢献するという知見が得られた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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