研究概要 |
本研究のうち脳機能画像研究においては、fMRIを用いて誘導運動(周辺の運動情報によって運動視知覚が変調する錯視)知覚時のヒト視覚皮質の脳活動を調べた。その結果、視覚運動処理に関連するhMT+野の活動が、誘導運動の影響で縞刺激が動いて見えると高くなり、止まって見えると低くなるといった誘導運動知覚と対応するパターンを示した。この傾向はVl野など初期の領野に比べ、hMT+野において最も強く見られた。この結果は、hMT+野における脳活動と主観的な誘導運動の知覚が関連することを示唆している。この成果については、Society for Neuroscienceにおいて発表し(Takemura et al.,2011)、現在論文を執筆中である。そのほか、fMR1を用いた研究としては、錯視の持つ美的性質(Stevanov et al.,2011)の神経相関物(neural correlate)を調べる研究を開始した。 新しい錯視の探求研究としては、静止画が動いて見える錯視として「トゲトゲドリフト錯視」と「シマシマドリフト錯視」を発見・最適化し、オオウチ錯視の再検討を行なった。フレーザー・ウィルコックス錯視群においては、明度が低い時に強くなる刺激配置を見出した。顔の錯視としては、顔がガクガクして見える錯視、アイシャドーによる視線方向の錯視や正立顔の過小視などを発見・報告した(Araragi et al.,2011;Ueda et al.,2011)。 数学的研究としては、新井はかざぐるまフレームレット(Arai and Arai,2009)を用いてオオウチ錯視の構造を解析した。そのほか、消失錯視を規定する視野の偏心度と経過時間の関係を微分方程式を用いつつ明らかにした(Araragi and Kitaoka,2011)。
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