研究課題/領域番号 |
22243044
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北岡 明佳 立命館大学, 文学部, 教授 (70234234)
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研究分担者 |
新井 仁之 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (10175953)
蘆田 宏 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20293847)
栗木 一郎 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (80282838)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 錯視 / 運動視 / 色 / 杆体 / 錐体 / fMRI / 数学 |
研究概要 |
静止画が動いて見える錯視のうち、最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視の色依存性錯視について重要な発見があった。明るい時と暗い時で錯視の方向が逆転するというものである。暗い時とは薄暮視に相当するため、杆体の関与が考えられるということになった。最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視は中心視で錯視が弱く、暗い時に見える錯視も中心視で弱いのであるが、杆体が中心窩付近にないことに対応する。このように、錯視の原因を網膜の視細胞に求めるのであれば、明るい時の錯視を何らかの視細胞に求めることになるが、錐体を想定できるかどうかは付加的な仮説が必要であるため、今後の検討を要する。 fMRI研究では、順応法を用いて「蛇の回転」錯視に応答する脳領域を調べた結果、これまでわかっていたhMT+以外に、V1および多くの視覚領野に応答が見られた。このことから、「蛇の回転」錯視の「動いて見える」こと自体の起源はV1の細胞にあり、hMT+では統合されて回転の知覚が生じるという考え方が妥当であることがわかった。この研究は論文として公刊された。そのほか、反転図形が反転して見える時の脳活動測定研究の一部を学会発表した。 数学的研究は、静止画が動いて見える錯視のアルゴリズムを用いて、どんな画像からも錯視図形を作り出すことができるようになっていたが、その実用化が一件見られた(一般企業の商品のデザイン)。錯視の数学的研究の論文として、心理学評論誌に「視覚の数理モデルと錯視図形の構造解析」というタイトルでレビューを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
錯視の知覚心理学的研究部分は静止画が動いて見える錯視で予想外の躍進があったため、100%の達成度と評価する。fMRI研究は運動対比錯視の論文を1本出したので、80%の達成度と評価する。足りない20%は、同時に進めている反転錯視の研究が学会発表に留まったための減点である。数学的研究は錯視の数学的研究のレビュー論文の公刊と、静止画が動いて見える錯視のアルゴリズムの実用化がなされたことが業績であり、80%達成度と評価する。足りない20%は予定していた色の恒常性錯視のアルゴリズムが未完成であったための減点である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は最終年度であるので、重要な発見のあった色依存の最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視のメカニズムの解明を可能な限り行うとともに、今後の研究の方向性を多面的に検討する。fMRI研究は反転図形に応答する脳領域を明らかにする。数学的研究としては、色の恒常性錯視のアルゴリズムを完成させる。
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