研究概要 |
分岐理論に関する研究を進めた。 正標数の多様体のガロワ被覆の境界における分岐に対し、その不変量が境界の微分形式を定める。これが極をもたないことがZariski-永田の純性定理からしたがう。この性質により、ある仮定のもとで、l進層の特性類を定義できる。このことの証明を含むAbbes氏との共著論文を完成させ、投稿した。 局所体上の多様体のl進層に関する導手公式の一般化であるRiemann-Roch型公式についての加藤和也氏との共著論文を,完成させ投稿した.これらの結果は、8月にインドのハイデラバードで行われた国際数学者会議での45分招待講演で発表した。それに先だちゴアのサテライト研究集会で行われた研究集会では、高次元の分岐におけるSwan類の整数性について発表した。これは古典的な分岐理論における導手の整数性に関するHasse-Arfの定理の高次元化である。 偶数次元の多様体の中間次元のl進コホモロジーが定めるガロワ表現は直交表現であり、Stiefel-Whitney類が定義される。この不変量とde Rhamコホモロジーが定める2次形式のHasse-Witt不変量との関係についての予想を定式化しさまざまな場合に証明する論文を、完成させ投稿した。多様体の族を考える場合には、対称複体に対するHasse-Witt不変量を定義する必要があり、それが予想の定式化で重要である。Stiefel-Whitney類はガロワ表現のイプシロン因子という数論的な不変量と深く結びついたものであり、代数幾何的に構成される表現についてはそれを具体的に計算する方法が得られた。 混標数の局所体の分岐群の次数商が,これがp倍でOになりその指標群が微分形式と結びつくことを証明した論文を出版した. 5月には、東京大学玉原国際セミナーハウスで数論幾何の若手研究者を集めて、p進コホモロジーを主題とした研究集会を行った。
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