研究課題/領域番号 |
22244002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川又 雄二郎 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (90126037)
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キーワード | 極小モデル / 標準因子 / 正値性定理 / 正規交差多様体 / 混合ホッジ構造 / 導来圏 / トーリック多様体 / 例外対象 |
研究概要 |
今年度も極小モデル理論に関係した研究を継続し新たな結果を得た。まず一つ目の論文では、高次元多様体における標準因子の正値性定理が、既約ではないような多様体の場合へも自然に拡張することができ、次元に関する帰納法を使う場合に必然的に現れる非既約多様体へ応用できることを証明した。一般化された正規交差多様体と呼ばれるものに対して、ドゥリーニュが定義した混合ホッジ構造が明示的に記述できることを証明し、重みフィルトレーションを具体的にうまく構成し、得られた混合ホッジ構造が滑らかな多様体に対する場合と同様のわかりやすい構造を持つことを証明した。これを使って、だいぶ前に書いた論文「Pluricanonical systems on minimal algebraic varieties」(Invent. Math. 79号、1985年)の定理 4.3 の証明において使った論法の不十分だった部分を正当化した。 二つ目の論文では、極小モデル理論の導来圏的側面を、トーリック多様体の場合に考察した。以前発表した論文「Derived categories of toric varieties」(Michigan Math. J. 54号、2006年) の続きである。前の論文ではトーリック極小モデル・プログラムによる導来圏の変化を具体的に記述したが、ここでは Q-分解的トーリック多様体に対する相対的極小モデルの構成に現れる因子抽出写像による導来圏の変化を具体的に記述し、半直交分解による残りの部分が例外対象の列で生成されることを証明した。さらに、与えられた Q-分解的トーリック多様体に対して、これと同値な導来圏を持つ多様体(フーリエ向井仲間)が有限個であることも証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に重要な結果が出ている。思わぬ画期的な成果ではないが、このような結果を積み上げていくことが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後もこのペースを維持し、重要な結果を積み上げていく方針である。極小モデル理論のモジュライ理論への応用や導来圏理論との関係の他、正標数の議論を標数0へ応用できないか考察していく予定である。
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