代数多様体の双有理幾何学の観点から連接層の導来圏を研究する中で、代数多様体上の連接層の非可換変形の研究に導かれた。代数多様体自体やその上の層は可換な対象だが、変形の底空間が非可換環であるような変形を考察した。理論の枠組みは可換変形の場合の類似であるにもかかわらず、非可換変形のほうが多様な変形を許す場合がある。しかも、非可換変形によって得られた層が可換変形によって得られたものよりもよい性質を満たす場合があるのが興味深い。さらに、層の直和を「多元非可換変形」すると、直和因子の間の非可換相互作用が起きるのも特徴的である。なお、これらの理論はより一般にアーベル圏の対象に対しても成立する。 この研究では、まず対象のなす「単純組」というものを定義し、その半普遍変形を構成した。そして、局所的にはカラビヤウ条件を満たす3次元代数多様体の連接層の単純組の多元非可換変形を考察し、底空間上相対的な球面対象が数多く構成できることを示した。これにより、相対的球面ねじりによる導来圏の同値関手が数多く構成された。また、局所的にはファノ条件を満たす代数多様体上では、底空間上相対的な例外対象が数多く構成され、導来圏の半直交分解が誘導されることを示した。
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