研究課題
南極ドームふじ基地は、標高3810m、最低気温マイナス79℃の寒冷な高地である。輸送は雪上車が主であり、沿岸の昭和基地から約1000kmの行程を3週間を要する。途中にはみずほ基地から中間地点までの雪面状態は特に悪いことが知られている。南極望遠鏡は、南極の空の良さを生かすために、高い感度が要求される。高感動の精密機器をこのような過酷な条件下へ輸送運用するのは容易ではない。望遠鏡本体に関しては、アンテナの駆動部が低温下でも正常に動作するかが問題となる。アンテナ構成機器の個別試験を基に、低温下でも、断熱材とヒータの付加で駆動のめどが立っていたので、ドームふじでの風の影響も考慮した計算機シュミレーションを行い、実際に、低温実験室でアンテナの駆動試験を行った。その結果、断熱材とヒータの有効性は確認できたが、風の影響があると、無風状態と比べて大幅に機器の温度してしまうことが判明した。ドームふじでは、10m/sを超える強い風はめったに吹かないが、常に5m/s程の風が吹いていることが知られている。今後対策が不可欠となった。また、電波望遠鏡の駆動は経緯台式である。仰角モータは、方位角モータの上部に搭載するため、方位角モータの駆動に伴い、ケーブルを可動させる処理が必要である。ケーブルは、低温で硬化してしまい、アンテナ駆動の妨げになる。ケーブルの硬化はガラス転移温度に依るため、転移温度の低い素材を選び、複数のケーブルに関して試験を行い、ドームふじで予想される低温下でも、問題のないケーブルの目処を立てた。望遠鏡を南極での運用に向け、試験場所の調査も行った。試験地は、乾燥した高地が必要であるが、世界的にも適地は限られている。チリで調査を行ったところ、北部の砂漠地帯で気象条件としては適している地域を見出したが、電力の確保には課題があることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
受信機の開発や試験運用地の調査は進んでいるが、受信機と望遠鏡の駆動試験の結果、南極の環境に耐えるためには、構造や保温機構に想定以上に工夫が必要なことが判明した。
本年度の研究で明らかになった、南極での低温環境に耐える機構を盛り込み、問題点を解決を目指す。計算機シュミレーション及び評価試験により、望遠鏡システムの性能を検証し、望遠鏡システムの完成を目指す。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.px.tsukuba.ac.jp/home/astro/nakai/www0/index.html