研究課題
本研究では、一酸化炭素分子の回転遷移スペクトル^<12>CO(2-1)[230GHz],^<13>CO(2-1)[220GHz],C^<18>O(2-1)[220GHz]の3輝線同時観測により、数分角の空間角度分解能で、我々の天の川銀河の分子ガスの分布・運動・物理状態を徹底した広域観測を中心として明らかにする。そのため、両偏波成分を同時受信可能な2SB受信器を1.85m電波望遠鏡に搭載することにより、観測効率を向上させる。本年度の成果は以下の通りである。1.両偏波受信に対応した中間周波数系を望遠鏡に搭載し、動作に問題がないことを確認した。もう一系統のデジタル分光計の制御のためのプログラム開発を行い、それに対応した観測プログラムを作成した。動作試験中にデジタル分光計の温度が許容範囲を超えたため、別途冷却システムを構築する必要があることが分かった。2.片偏波受信機を用いて、^<12>CO,^<13>CO,C^<18>Oスペクトルを用いた広域分子雲探査を継続した。オリオン座A,B分子雲、はくちょう座OB7分子雲、銀河面の分子雲、おうし座分子雲など、様々な環境を有する分子雲の広域観測を完了した(本年度春に観測終了)。その結果、^<13>CO(J=2-1)スペクトルが分子ガスの密度・温度を決定する際に非常に重要な役割を果たす、等の重要な知見が得られ、これらの成果は、日本天文学会での報告や、記者発表の形で発表された。現在、その成果を投稿論文として執筆中である。また、本年度の冬からのシーズンには、はくちょう座X領域、W3・W4・W5領域、ヘビ座領域、等の観測を新たに開始した。
2: おおむね順調に進展している
分子雲広域観測に関しては、初年度から順調に推移しており、様々な結果が出つつある。受信機に必要なSIS素子の供給が非常に厳しい点が問題であるが、最低限の素子の選定は終わりつつあり、また、それ以外のコンポーネントに関してはほぼ開発を完了しており、両偏波同時受信のめどは立っている。
両偏波同時受信機システムを1.85m望遠鏡に搭載することにより、観測効率を向上させ、広域分子雲探査を加速させる。現状では、性能の良いSIS素子は必要最低限の数入手可能なめどが付きつつある。しかし、SIS素子の供給が極めて厳しい状態は今後も継続すると思われ、性能測定を続け、性能の良い素子の発掘を継続する必要がある。観測データは順調に取得されつつあり、COの同位体のJ=2-1スペクトルが分子ガスの物理的性質の解明にとって、極めてパワフルであることが明らかになりつつある。今後は、他のグループ・研究者との共同研究をより進め、論文化を加速する。
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