研究課題/領域番号 |
22244027
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鷲尾 方一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70158608)
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研究分担者 |
柏木 茂 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (60329133)
黒田 隆之助 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (70350428)
坂上 和之 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (80546333)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高品質電子ビーム / 逆コンプトン散乱 / 偏向空洞 / マイクロビーム / マイクロバンチ / 高輝度X線 / バンチ圧縮 |
研究概要 |
本研究課題では非常に高出力なRF偏向空胴が中核となっており、当該年度はこの設計の最適化及び実機用の設計を行うとともにビームシミュレーションによって性能を確認した。RF偏向空胴の設計にはHFSS及びMW Studioを用いて行い、これによって得られた電磁場分布をGTPに取り込むことによって評価を行った。それぞれの計算コードのイタレーションを行うことによって2Cellを有する偏向空胴によって十分な性能を確保できることが分かった。本プロジェクト内では早稲田大学に設置されている加速器システムを用いて試験を行うため、非常に装置の制約が大きく、高周波源を2つに分けて行うという境界条件があるために設計の最適化に時間を要した。 得られた設計は非常に大きな偏向が得られることがビームシミュレーションからも確認できており、横方向(進行方向と垂直方向)に生成した密度の濃淡を縦方向(ビーム進行方向)に効率よく転写することができる。これに関連し、エミッタンス交換の手法をコヒーレントコンプトン散乱に必要なマイクロバンチビーム生成に応用するための理論考察も行った。具体的には、RF電子銃とソレノイド電磁石の組み合わせとスキュー四極電磁石を使い、水平-垂直エミッタンス交換(変換)をすることにより扁平ビームを作り出すパラメータサーチを行った。ソレノイドで水平垂直の運動量結合を作り出し、スキュー四極電磁石で相関を取り除くことにより、水平・垂直比が50以上のビームを作り出せる事をシミュレーションにより確認した。 今後はECC-RF-Gunを用いたバンチ圧縮によって横方向に生成した濃淡の縦方向における圧縮に関しても検討していく。 2012年度で、本研究課題の中核となる電子ビーム偏向空胴が十分な性能を持つ設計が完了し、製作も順調に進んでいる。偏向空胴が完成次第設置試験を行い、原理試験を行うことができると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子ビームのマイクロビーム化がすでに実現しており、これと、偏向空胴及びマルチスリットを用いたビームきりだし、空間→時間変換が可能な状況である。この実験に必要な空胴の完成に目処が立っており、このシステムが完成次第目的の原理実証実験を行うことができる状況である。またビーム計測についても遷移放射、もしくはチェレ ンコフ光によってコヒーレント化を確認できる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
前年までに実施してきた開発品をシステムとしてくみ上げ、トータルシステムとしての性能評価を実施する。特に空間領域のマイクロバンチを時間領域に変調するシステムの詳細テストを実施する。 具体的には、RF-Deflectorを使った空間・時間変換の確認のため、コヒーレント放射(THz)をチェレンコフ光または遷移放射光によって確認する。 また、昨年度に開発したパルスレーザーキャビティーシステムの性能評価を実施するとともに、発生させたマイクロバンチとの逆コンプトン散乱実験により、理論から予測されるX線フォトン数との比較によりシステムの完成度を評価する。 ナノ構造を持つ電子ビームの安定輸送についても、その安定性を確保方式の確立をめざし、ビームラインの徹底した設計によって問題解決を図る。
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