研究概要 |
走査型微小共振器の開発: 固体内にランダムに存在する少数準位量子系(局在電子準位や量子ドット等)と光微小共振器との最適結合を容易に達成するための,走査型微小共振器を開発している.本年度は,最適な共振器構造を設計するため,FDTD法による電磁場解析を進めた.その結果,ファイバ端面を曲率半径数μmの凹面に加工し,ファイバ端面および基盤面にブラッグ反射層を施すことで高いQ値と小さなモード体積を両立し,非常に大きなパーセル因子をもつ高性能な共振器を構成できることがわかった.すわなち,本手法による共振器構造が原理的に優れたものであることが示された. 単一量子系の光応答: InAlGaAs/AlGaAs単一量子ドット試料の顕微発光分光を行い,その発光スペクトル,励起スペクトル,それらの温度変化等の基礎データを収集した.今後,NV中心試料および量子ドットと,上記の共振器を組み合わせた単一量子系-微小共振器結合系を実現する. 二準位,三準位量子系を用いた単一光子トランジスタの理論: 純位相緩和を輻射緩和とパラレルに扱う理論手法を開発した.具体的には,考察対象となる系に加え純位相緩和の起源となる環境自由度(低エネルギー励起場)も含めた「拡張量子系」の量子動力学を入出力定式化により厳密に解析する手法を開拓した.本手法は,輻射緩和・無輻射緩和・純位相緩和の三種の緩和を統一的なフォーマリズムで解析することを可能にするものであり,これらが共存する固体系での量子光学応答の定量的解析に大変適している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに,走査型共振器構造の電磁界解析による基本設計を行い,その構造が原理的に優れたものであることが示された.最終年度は,共振器の製作に全力を挙げ,NV中心試料との結合を実現する.また,これまで考えてきた走査型共振器構造以外に,導波路を用いた共振器構造についても電磁界解析を行い,その可能性について検討する.
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