走査型微小共振器の開発: 固体内にランダムに存在する少数準位量子系(局在電子準位や量子ドット等)と光微小共振器との最適結合を容易に達成するための,走査型微小共振器を開発している.昨年度に引き続き,FDTD 法による電磁場解析を進め,ファイバ端面を曲率半径数μmの凹面に加工し,ファイバ端面および基盤面にブラッグ反射層を施すことで高いQ値と小さなモード体積を両立し,非常に大きなパーセル因子をもつ高性能な共振器を構成できることを明らかにした.この走査型微小共振器を実装するための高分解能XYZ軸ピエゾ移動ステージを導入し,その駆動プログラムを開発した. 単一量子系の光応答: InAlGaAs/AlGaAs単一量子ドット試料およびダイヤモンドNV中心試料の顕微発光分光を行い,発光スペクトル,励起スペクトルを測定した.単一量子ドットや単一NV中心の共鳴励起を可能とした. 二準位,三準位量子系を用いた単一光子トランジスタの理論: 固体系を利用した光量子情報処理においては,固体環境に由来する位相緩和の克服が重要である.本年度は,平成23年度に開発した三種の緩和を統一的に扱う理論手法を量子ドットからの共鳴蛍光や自然放出に適用し,量子情報処理における単一光子源としての観点から,放出光子の量子力学的な諸性質(スペクトル・干渉性・純粋度)を評価した.また,単一光子入射と事後選択により,空間的に離れた二つの量子ドット間に量子もつれを生成する方法を提案した.
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