研究課題/領域番号 |
22244038
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
水木 純一郎 関西学院大学, 理工学部, 教授 (90354977)
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研究分担者 |
豊川 秀訓 財団法人高輝度光科学研究センター, 制御・情報部門ステーション・制御チーム, 主幹研究員 (60344397)
平賀 晴弘 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90323097)
筒井 健二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (80291011)
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キーワード | 強相関電子 / 共鳴非弾性X線散乱 / 遷移金属酸化物 / 放射光X線 / 超伝導 |
研究概要 |
本研究は、強相関電子系における電荷揺らぎ、特にスピン秩序や電荷秩序の衣を引きずった電荷励起を観測し、電子相関を定量的に測定しそれらが示す物性・機能発現の機構を解明するために以下の研究を行った。 共鳴非弾性X線散乱(RIXS)によって高温超伝導体関連物質である(Sr,Ca)_<14>Cu_<24>O_<41>の高圧下での共鳴非弾性X線散乱を行い、電荷秩序状態に対応する電子励起の観測に成功した。電荷秩序を示すLuFe_2O_4の電荷ゆらぎをRIXSで観測することによって電荷秩序の原因となっている電子相関をエネルギー、運動量空間で議論した。中性子非弾性散乱およびRIXS実験用に、反強磁性金属(Mn,Fe)3Siの大型単結晶を育成した。中性子非弾性散乱実験から、単純なスピン波磁気励起とストーナー励起だけでは、その一般化帯磁率を説明できないことを明らかにした。この結果は、バルク物性に現れる異常との関連を強く示唆する。中性子非弾性散乱の最大の弱点である弱い散乱強度を克服するため、中性子モノクロメータ・アナライザー単結晶の改良に取り組んだ。複数の単色中性子を取り出せるGe単結晶モノクロメータと、塑性変形Si/Ge単結晶ウェーハをエレメントとする新型モノクロメータを開発した。銅酸化物のNi不純物及びNi酸化物の銅不純物に対する共鳴非弾性X線散乱実験及びそれに対する理論計算を行い、不純物サイトの非占有状態の情報が共鳴非弾性X線散乱により得られることを明らかにした。不純物効果の新しい実験手段としての有効性を実験的に示した。実験手法の高度化にかかわる2次元検出器開発に関しては、実機として用いるフルモジュール型EIGER検出(ピクセルサイズ75ミクロン、ピクセル数512×1024)を製作し、循環冷却水他の周辺装置の整備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共鳴非弾性X線散乱の高エネルギー分解能化にとって重要な2次元ピクセルアレイ検出器の開発を行っており、それが順調に進んでいる。また、アナライザー結晶の高度化も順調に進んでいる。それらを利用した研究も論文化が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在開発を行っている2次元検出器を完成させ、それと新規に作製したアナライザーとを組み合わせることによって、RIXSの高エネルギー分解能を行い、電荷フラストレーションが在り電荷がスピンの自由度と強くカップルした新しい概念の強誘電体(電子強誘電体)として注目され、電荷の揺らぎが電子強誘電性を安定化しているとも考えられているLuFe_2O_4の電荷秩序の集団励起の観測、その励起の運動量依存性にマルチフェロイックの原因となるスピンとの相互作用を反映したスペクトルを観測する。また、ホールドープ系における電荷ダイナミックスをエネルギー・運動量空間で解析し電荷秩序の発現機構や電荷秩序と超伝導の関係を明らかにする。
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