希釈冷凍機で実現する0.3K以下の極低温下で作動する低速電子線回折装置(極低温LEED)の設計を進め、熱流入量や測定感度の詳細見積もりを行い、十分開発可能であるとの結論を得て、論文発表した(印刷中)。また、また、極低温LEED実験に先立ち、ヘリウム4の4/7整合相の安定性を熱力学的に調べるため、従来のグラフォイルより単結晶子サイズが10倍以上大きいZYXグラファイト基板上で熱容量と蒸気圧測定を行うための実験装置を開発した。性能確認のため、ヘリウム4の1層目√3×√3整合相の局在-非局在転移(T=3K)に伴う熱容量異常を精密測定したところ、グラフォイル基板に比べ相転移の臨界領域が1桁近く拡がり、熱容量ピークも2倍に達するなど、期待通りの性能を確認した(論文印刷中)。 一方、超低温走査トンネル顕微鏡を使って、単結晶グラファイト表面に物理吸着したキセノン単原子層の試料を作成するために最適な温度・圧力条件を探索した。そうして得られた試料に対し、走査トンネル分光測定を行ったところ、予備的な結果ながら、キセノン√3×√3整合相が形成されている表面で、グラファイトの表面電子状態密度に2eV程度の大きなエネルギーギャップが観測される様子を捉えることができた。これを電気伝導度の測定からも確認するための準備として、劈開グラフェンにフォトリソグラフィー法で安定して微少電極を作成する技法も開発した。
|