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2011 年度 実績報告書

多環縮合パイ電子系超伝導体の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22244045
研究機関岡山大学

研究代表者

久保園 芳博  岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (80221935)

キーワード芳香族炭化水素超伝導 / 化学ドーピング / 電界効果ドーピング / 構造 / 電子状態
研究概要

本研究の目的は、有機芳香族分子固体への電子あるいはホールのドーピングによる電子状態制御を通じた超伝導特性の発現である。22年度中に、K,RbならびにCaをピセンにドーピングして超伝導を実現するとともに、コロネンへのアルカリ金属ドーピングで超伝導を実現した。23年度の独自の研究成果を以下に箇条書きで列記する。
(1)ピセンへのSrならびにBaのドーピングによる超伝導の実現
(2)ラマンを使ったアルカリ金属のピセン結晶へのドーピング量の特定と作製される相の決定
(3)ピセン超伝導体の超伝導機構の解明に向けて電子格子結合定数評価と状態密度の比較
(4)フェナントレンへのSr,Baのドーピングによる超伝導の実現と低温X線回折実験
(5)電界効果による有機芳香族薄膜・単結晶へのホールドーピング
(1)については、今回Ca以外のアルカリ土類金属原子をドーピングすることに成功し、Sr_<1.5>piceneでT_c=5K、Ba_<1.5>piceneでT_c=9Kの超伝導転移温度であることを示した。(2)についてはアルカリ金属原子をピセン結晶にドーピングすることによって、電子がピセンに供与されてラマン振動数が低振動数側にシフトしていくことを利用し、アルカリ金属原子ドーピングで形成される相は、K_xpicene, Rb_xpiceneともにx=1とx=3のみであることを明らかにした。(3)に関しては、理論的に電子格子結合定数を評価しこの系の超伝導の特徴を明らかにした。(4)に関しては、Sr_<1.5>phenanthreneについて20%程度の超伝導フラクションを有する試料のX線回折測定を行った。その結果、Srはピセンと同じくab面内に入ること、温度の低下に伴ってaとbは減少するが、cはほとんど変化しないか、少し広がることを見出した。(5)についてはピセン薄膜ならびに単結晶に対してイオン液体を使った高濃度電界効果ホールドーピング(あるいは電気化学ドーピング)を行うことに成功した。また、低濃度蓄積ではあるが、高誘電ゲート絶縁膜を含む固体誘電膜を使った高移動度の有機芳香族薄膜電界効果トランジスタの作製に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ピセンの化学ドーピングによる電子ドープ超伝導体について、ドープ金属原子の種類を増加させることに成功した。また、形成できる相を特定するのにラマンが有効であることを示した。フェナントレン超伝導体について構造研究に取り掛かれることができた。また、電界効果超伝導についての準備をほぼ終了させることができた。5年間の計画としておおむね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

現在、試料作製を固相でのアニーリングを基に行っている。ピセン超伝導体については、超伝導フラクションを増大させることが最も重要な課題であるので、合成法の多角化を含めて検討を行っている。具体的には、アルカリ金属原子やアルカリ土類金属を溶液プロセスと、電気化学的手法で金属をドーピングする方法について検討している。また、別なフェナセン類や、さらに多様な芳香族系を使うことを検討している。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Strong Intermolecular electron-phonon coupling in the negatively charged aromatic superconductor picene2011

    • 著者名/発表者名
      T.Kato, T.Kambe, Y.Kubozono
    • 雑誌名

      Physical Review Letter

      巻: 107 ページ: 077001/1-3

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.107.077001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Metal-intercalated hydrocarbons : a new class of carbon-based superconductors2011

    • 著者名/発表者名
      Y.Kubozono, H.Mitamura, 他13名
    • 雑誌名

      Physical Chemistry Chemical Physics (Perspective article)

      巻: 13 ページ: 16476-16493

    • DOI

      10.1039/clcp20961b

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characteristics of conjugated hydrocarbon based thin film tranistor with ionic liquid gate dielectric2011

    • 著者名/発表者名
      Y.Kaji, K.Ogawa, R.Eguchi, H.Goto, Y.Sugawara, T.Kambe, K.Akaike, S.Gohda, A.Fujiwara, Y.Kubozono
    • 雑誌名

      Organic Electronics

      巻: 12 ページ: 2076-2083

    • DOI

      10.1016/j.orgel.2011.08.016

    • 査読あり
  • [学会発表] フェナセン系有機電界効果トランジスタの特性2012

    • 著者名/発表者名
      久保園芳博
    • 学会等名
      日本物理学会第67年次大会
    • 発表場所
      西宮
    • 年月日
      2012-03-24
  • [学会発表] 有機芳香族超伝導体の現状2012

    • 著者名/発表者名
      久保園芳博
    • 学会等名
      新学術領域(鹿野田特定)研究会
    • 発表場所
      仙台(招待講演)
    • 年月日
      2012-01-06
  • [学会発表] Superconductivity in metal doped hydrocarbons and their physical/chemical properties2011

    • 著者名/発表者名
      久保園芳博
    • 学会等名
      International Symposium on Frontier Superconductivity Research I
    • 発表場所
      北京・中国(招待講演)
    • 年月日
      2011-11-06
  • [学会発表] A new class of carbon-based superconductors : metal doped hydrocarbons2011

    • 著者名/発表者名
      久保園芳博
    • 学会等名
      The15th Japan-US workshop on Advanced Superconductors
    • 発表場所
      大阪(招待講演)
    • 年月日
      2011-10-28
  • [備考]

    • URL

      http://interfa.rlss.okayama-u.ac.jp/

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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