研究課題/領域番号 |
22244047
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
稲見 俊哉 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (30354989)
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研究分担者 |
松田 康弘 東京大学, 物性研究所, 准教授 (10292757)
岡本 淳 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任助教 (50555258)
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キーワード | パルス磁場 / X線吸収分光 / 価数転移 / メタ磁性転移 / cf混成 / 価数揺動 |
研究概要 |
本研究計画では、極低温・強磁場下で起こる量子相転移・量子臨界点近傍の秩序変数・電子状態を、放射光X線を利用した微視的な研究手法を用いて実験的に解明することを目的とする。我々はこれまで、X線回折法・X線吸収分光法とパルス強磁場を融合し、強磁場下での磁気構造決定や価数選別磁化測定等、様々な成果を挙げて来た。本研究では、これまでの硬X線を用いた回折・吸収実験の高精度化・高感度化を図るとともに、新たに軟X線領域でのX線吸収分光法を開発し、3d・4f電子の直接観測を目指す。 軟X線実験に関しては、23年度は測定装置の製作を行った。装置の設計から始め、議論の結果、昨年度の方針を転換し、第一段階としては、マグネットを超高真空中に挿入せず、また、光電子収量法での測定から開始することとし、これに合わせた装置を設計・発注し、納入までを行った。 硬X線実験に関しては、液体窒素冷却による急冷マグネットの製作を行った。これにより、パルス磁場間隔を現状の15分程度から2分程度に短縮することが出来、積算時間の増大から精度の向上が望める。しかしながら、テスト実験では試料位置での冷却能力が十分でなく、改良型でも実使用には困難なことが分かった。再度構造を検討し、24年度にテスト実験→本実験へと進める。硬X線実験では、装置開発に並行し従来型の装置での研究も進めた。約8テスラでメタ磁性転移を示すCeRu_2Si_2について、22年度には磁場誘起価数変化を発見したが、23年度には25テスラでメタ磁性転移を示すCeRh_2Si_2について価数の磁場依存性を測定し、同様に価数がわずかながら3価へ向かって減少することを見だした。CeRh_2Si_2はCeRu_2Si_2と異なり基底状態は反強磁性であるが伝導電子と4f電子の混成がある程度あり価数が4価側にずれていること、その混成が磁場により破壊されより局在した状態へ移ること、の2点が今回の測定から明らかになり、これは重い電子状態の定性的・定量的理解を進めるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、軟X線実験については、当初計画では、昨年度中にテストサンプルを用いた動作試験まで終わらせる予定であったが、装置の製作導入までで終わっている。次に、硬X線実験にいついても、昨年度中に高精度化実験の本格的利用に進む予定であったが、急冷マグネットの製作が進行しておらず、テスト実験に進めていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究は全体的に遅れがあり、さらに技術的な問題に直面している模様である。軟X線実験については予定より1年弱の遅れで推移しているが、24年度の後半にはX線を用いたテスト実験に進む予定であり、研究計画自体に変更はない。硬X線実験についてはマグネットの急速冷却系の製作に手間取っており、2年近い遅れになることが予想される。中性子散乱用マグネットの改良版なので、十分検討すれば、解決できる問題と考えている。一方で、従来型の装置では、精度としては厳しいところではあるが順調に成果が上がっており、研究計画自体に変更はなく、CeやYb化合物における磁場誘起価数転移を中心に研究を展開していく予定である。
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