研究課題
本研究は冷却されたシリコン光共振器を用いて,熱雑音を低減し,世界最高レベルのレーザー周波数の安定化を行い,将来的に光格子時計のローカルオシレーターとして利用することを目指すものである。本研究では熱雑音低減のために,曲率半径の浅いミラーを用いるが,その研磨には困難が伴い,昨年度製作したミラーの性能は不十分であった。本年度は,研磨方法の改良及び,誘電体多層膜形成手法の改良を重ね,フィネス8000程度の共振器を製作することに成功した。その上でこのシリコン光共振器を,昨年度までに開発した低振動クライオスタットで3.5Kまで冷却した。この状態で,光ファイバーを通してレーザー光をクライオスタット内に導入し,レーザーをロックすることに成功した。制御回路の改良・最適化を行うことで,最終的に750kHzの広帯域制御を実現した。制御のエラー信号から得られた残留周波数雑音は,1秒のアラン標準偏差で約10の-18乗であった。また,共振器に加わる振動による弾性変形によって,共振器長が変化してしまう問題を低減するため,能動防振ステージの開発を行った。これは,伸縮可能な6本の脚で支えられた6自由度の姿勢制御が可能なヘキサポッドステージに,振動センサーを取り付け,その信号を伸縮脚にフィードバックすることで,能動的に振動を取り除くものである。また,全ての部品を真空対応にすることで,真空容器内にこの能動防振ステージを設置することが可能になっている。本年度はこの能動防振ステージの組み立て,試験を行い,目標である1Hzから10Hzにおいて10倍以上の防振性能を達成することに成功した。以上の結果から,3.5Kの低温で動作可能なシリコン光共振器を用いた高安定レーザーシステムが完成した。今後は,このレーザーを光格子時計とリンクし,安定度のループ外評価等を行っていく。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Phys. Rev. D
巻: vol. 88, no. 4 ページ: 043007
10.1103/PhysRevD.88.043007