研究課題
高強度レーザー電場による分子配向制御技術を導入した、「配向分子サンプル」+「光電子の運動量画像測定」の新たな実験スキームの構築を推進した。これと平行して、多重同時計測運動量画像分光法による軟X線放射光利用による従来型の以下の実験をおこなった。OCS分子を対象とした実験では、配向OCS分子のO1sおよびC1s光電子の角度分布を測定した。その結果、直線型の分子の場合は、末端原子からの光電子の角度分布からは分子構造を決定することが出来ないことを明らかにした。このことは、光電子回折法を開拓する本研究にとっては貴重な知見となった。NO_2分子を対象とした実験では、広いエネルギー領域にわたって、配向NO_2分子のN1sおよびO1s光電子の角度分布を測定した。そして、N1sおよびO1sのイオン化閾値の上に現れる形状共鳴のダイナミクスを時間依存密度汎関数法の計算結果との比較により明らかにした。さらには、運動エネルギー90eVのN1s光電子の角度分布パターン(光電子回折像)を光電子散乱理論計算で再現することによって、NO_2分子の分子構造(N-Oの結合長と∠O-N-Oの結合角)が決定できることを明らかにした。BF_3分子を対象とした実験では、広いエネルギー領域にわたって、配向分子BF_3のF1s光電子の角度分布を測定した。現在は実験データの解析中であるが、時間依存密度汎関数法の計算結果との比較により、平面分子に特有な形状共鳴のダイナミクスのメカニズムを解明できる見通しがついてきた。運動エネルギー60eVのB1s光電子の角度分布パターン(光電子回折像)からは、光電子散乱理論計算の援用によって、BF_3分子の分子構造を決定しつつある。
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