研究課題
水素やメタン、氷は宇宙において大量に存在し、水素をはじめとするガスや氷が主要な構成成分と考えられている。実際、これらの水素やメタン、氷からなる水素ハイドレートや メタンハイドレートが近年太陽系の惑星・衛星や恒星の初期過程である原始星に存在する可能性が次々に報告されている。そこで、メタンハイドレート(MH)や水素ハイドレート(HH)を氷天体内部に相当する低温高圧から高温高圧の条件下におき、これらの相変化や物性変化を実験的に明らかにし、これらの知見を基に氷惑星や衛星の内部構造を推定し、進化過程を検討するのが本研究の目的である。24年度においては、水素ハイドレートが低温高圧下で相変化することを明らかにした。水素ハイドレートの高圧相であるfilled ice Ic構造は、そのホストフレームワークが立法晶であることから従来立法晶と考えられてきた。数年前、第一原理計算によって立法晶から正方晶に相転移することが理論予測されていた。本年度において、ダイヤモンドアンビルセルとヘリウム冷凍クライオスタットを用いて低温高圧実験を行、その場X線回折実験で明瞭に正方晶に転移することを捉えた。そして、低温高圧領域における両相の存在領域を決定した。さらに、ラマン分光により、正方晶構造形成の原因は、ゲスト水素分子の構造内での自由回転が抑制され、定方位配向することによりもたらされた構造の変形によることを明らかにした。定方位配向による相転移によって弾性定数が変わることが明らかとなったが、これらの物性変化は低温下で氷天体の形成過程を検討する上に重要な知見となる。
1: 当初の計画以上に進展している
従来、ガスハイドレート構造中では、ゲスト分子は自由回転していると考えられていたが、高圧と低温によって、ホスト構造内でゲスト分子の配向秩序化がおきるということをはじめて実験的に明らかにしたことはガスハイドレート研究において重要な知見であり、研究は計画以上に進展しているといえる。
HHにおける低温・高圧下でゲスト分子の配向秩序化が明らかとなったので、MHにおいても同様の低温物性が存在するかどうかを調べ、ガスハイドレートの低温物性の一般則の構築を行う。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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