研究課題
水素ハイドレートは宇宙に広く存在すると推定され、また、水素利用技術において水素吸蔵媒体としても注目されている。この水素ハイドレートの高圧相(filled ice Ic構造)は、氷Icのフレームワークの中に水素分子がトラップされた構造をとっている。このfilled ice Ic構造は理論計算により低温高圧下でcubic からtetragonalに相変化することが予測されていた。本研究ではダイヤモンドアンビルセルとヘリウム冷凍クライオスタットを用いて低温高圧実験を行った。温度圧力条件は5 から55 GPaおよび 30 から 300 Kである。評価はX線回折とラマン分光を用いた。観察された実験データから、filled ice Icは低温高圧下でtetragonal相に相変化すること、そして、このtetragonal相は広い低温高圧領域に安定して分布することが明らかとなった。cubic相とtetragonal相の分布から両相の境界は300Kでは約20GPa、200Kでは約15GPa、100Kでは10GPaを通ると推定された。従って、本研究は理論予測された現象をを実験的に検証したということができる。teragonal相形成の原因について以下のように解釈される。室温および低温ラマン分光によって、ゲスト水素分子の回転モードが、上述のX線回折で得られた境界でスプリットすることが観察された。filled ice Ic構造中では水素分子は自由回転をしており、球対称を呈している。回転モードがスプリットするということは、分子の対称性が球対称から低下し、非対称(たとえば回転楕円体)になっていることを示唆している。すなわち低温高圧下においてゲスト水素分子が配向し、それに誘発されて構造が変形し、teteragponal構造が形成されたと考えることができる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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