研究課題/領域番号 |
22244058
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
R・G Greve 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (90374644)
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研究分担者 |
杉山 慎 北海道大学, 低温科学研究所, 講師 (20421951)
阿部 彩子 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (30272537)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 氷床 / 棚氷 / 力学 / 数値モデル / 南極 / グリーンランド / 気候変動 / 海面上昇 |
研究概要 |
南極およびグリーンランド氷床に関して、SeaRISE(氷床変動に起因する海水面変化コミュニティー)が提唱する条件で、将来500年の変動予測を行った。実験条件は、一定気候条件の他、1IPCCのRCP8.5温暖化ガス排出シナリオに基づいた気候変動に、様々な底面すべりと棚氷融解を組み合わせた条件を用いた。2011年度の取り組みを発展させて、3つのモデル、SICOPOLIS(南極:佐藤、グリーンランド:Greve)、IcIES (グリーンランド:阿部および齋藤)、Elmer/Ice (グリーンランド:Seddik)による実験が完了した。南極氷床の変動が棚氷の底面融解に最も敏感であるのに対して、グリーンランド氷床は気温と降水量の変化に敏感であった点は興味深い。以上の成果をまとめ、SeaRISEの共同論文(Bindschadlerら、印刷中、Nowickiら、印刷中)にデータを提出した。加えて、佐藤の博士論文(2012) 、Herzfeld ら(2012), Levermann ら(2012)、Sato and Greve (2012) 、および Seddik ら (2012)の論文としてまとめられた。 SeddikによるElmer/Iceの成果は、欧州が主導するIce2sea プロジェクトに貢献した(Gillet-Chauletら、2012)。さらにGreveは、SICOPOLISを用いた気候と氷の力学条件に対するグリーンランド氷床変動研究(Applegateら、2012; Rogozhinaら、 2012)に貢献した。 Seddikと杉山は、Elmer/Iceを用いた東南極しらせ流域での研究を推進した。フルストークスモデルと浅層近似モデルとの差異に関する初期的な成果がSeddikによって国際学会にて発表され(米国地球物理連合)、2013年度も研究継続予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度の重要な成果は、SeaRISEコミュニティーへの協力によって第5次IPCCレポート(AR5)に貢献した点である。その実現のために、課題として与えられた必要な数値実験を、南極氷床についてはSICOPOLIS、グリーンランド氷床についてはSICOPOLIS、IcIESおよびElmer/Iceの各モデルによって完了した。実験結果をコミュニティーに提供することで、SeaRISEによる3つの査読付き論文の出版に貢献することができた。これらの論文の出版時期は、AR5への掲載条件(2012年7月末投稿、2013年3月15日受理)を満たすものであり、その内容がAR5に掲載される予定である。 一方Ice2seaプロジェクトは南極氷床を取り扱わないため、Elmer/Iceによるグリーンランド氷床に関する実験結果を提供した。このプロジェクトによる論文もAR5の掲載条件を満たす形で出版され、その内容がAR5に掲載の予定である。 東南極のしらせ流域に関する数値実験がスタートし、いくつかの初期的な成果が出た。しかしながら、フルストークスモデルに起因する数値的な不安定性の問題が予想よりも深刻で、2013年度も継続してその解決取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
SeaRISEとIce2Seaプロジェクトに参画する形でIPCCのAR5に貢献する、という最大の目的は2012年度までに達成された。これを受けて、当研究課題最終年度となる2013年度では、氷床変動に関する数値実験をさらに一歩先へ押し進める。3つのモデル(SICOPOLIS、Elmer/Ice、IcIES)に正確な時間軸を導入することで、長い時間スケールを持った過去の氷床変動と、数十年スケールの将来変動予測との遷移過程を、より正確に再現することを目指す。また、IPCC AR5にもデータを提供している全球大気海洋結合大循環モデルMIROC AOGCMによる将来の気候条件を用いて、SICOPOLISとIcIESを用いた数値実験を実施する。またこれまでの研究によって、南極氷床変動が棚氷融解に最も敏感であることが判明した。この成果に基づいて、海水温の変動や地域による条件の違いを区別した、より現実的な棚氷融解のパラメータ化手法を開発する。さらに、ドームふじ基地とリュッツホルム湾をつなぐ東南極しらせ流域において、流域スケールの氷床変動実験をElmer/Iceによって実施する。この取組の主目的は、しらせ氷河の速い流れが、現在および将来の流域変動に果たす役割を明らかにすることである。
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