研究概要 |
南極氷床(使用モデルSICOPOLIS)およびグリーンランド氷床(SICOPOLIS、IcIES、Elmer/Ice)の変動解析を実施し、その結果を国際的な研究コミュニティーSeaRISEへ提供した。この成果は3報の論文として出版された(Bindschadler et al., 2013; Nowicki et al., 2013a,b)。最も重要な結果は、南極氷床の変動には棚氷の底面融解が重要であるのに対して、グリーンランド氷床は気温と降水量に強い影響を受けて変動する点である。この知見はIPCCの第5次レポートにも取り上げられた(Church et al., 2013)。 Levermann et al. (2013)は上記の結果に線形反応理論を適用し、2100年までの南極氷床の氷損失を解析した。この解析は、19の気候モデルと2つの海洋モデルに基づいてEUプロジェクトIce2Seaが提供する海水温度と、IPCCが提唱する温暖化ガス排出シナリオ(RCP)を仮定して実施した。 またKusahara et al.はSICOPOLISを使って、最終氷期における南極氷床の棚氷変動を再現した。その結果、最終氷期における棚氷面積は現在よりも小さく、その底面融解は現在よりも大きいことが明らかになった。 さらに我々は海洋モデルを援用して、南極氷床の棚氷底面融解量を記述する物理的なパラメタライゼーションを開発した。この手法は南極氷床を6つの地域別に取り扱い、海水温度の変化が底面融解に与える影響を考慮したものである。その結果はAGU(R. Greve et al., 2013)その他の学会で発表された。 東南極のしらせ流域ではElmer/Iceによる数値実験を継続し、フルストークスモデルと浅層近似モデルの違いを検討した。その成果をまとめた論文(H. Seddik et al.)を執筆中である。
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