研究課題
平成25年度は,地殻~マントル内変動プロセスを明らかにするために,微小領域精密解析に基づく変成作用の全時相・全反応プロセスをより精密に解析した.これまでに得られた,変成作用の精密解析に関する研究成果を国内・国際学会で発表するとともに多くの国際誌に公表・印刷中である.25年度の進捗状況は以下の通りである.1.地殻深部~マントル物質の代表的試料として,ベトナム・紅河剪断帯~コンツム地域,南極・セールロンダーネ山地,モンゴル・ハンガイ山地,スリランカ・ハイランド岩体等の変成岩類.超塩基性岩類について解析し,黒瀬川帯などの国内における地殻深部由来の変成岩についても精密解析を実施した.これらの高温~超高温ならびに高圧~超高圧変成岩類について,精密な岩石反応組織の解析と極微小領域の元素マッピングを行い,リアルな変成プロセスを明らかにした.2.最適試料を選定して,全変成反応に関わるすべての変成鉱物の化学分析を電界放射形電子線マイクロアナライザー(FE-EPMA)等により行い,全変成反応の化学平衡を確認するために走査型蛍光X線分析装置により微小領域の岩石化学組成測定・マッピングを行った.3.共焦点顕微レーザーラマン分光分析装置を使用し,選定された最適試料の極微細変成鉱物の完全相同定を実施した.また,選定された最適試料の中から,ジルコン,モナザイトについてレーザー溶融型誘導結合質量分析計(LA-ICP-MS)およびFE-EPMAによる極微小領域年代測定を実施し,変成履歴解析を極めて高精度化した.4.地殻表層部との物質循環が想定されるマントル条件での反応物質についても解析するため,大陸衝突帯に分布する火山岩に包有されるカンラン岩ゼノリス・超高圧変成岩類および地殻深部変成岩について高圧実験を実施し,熱履歴と平衡条件を解析した.
1: 当初の計画以上に進展している
代表的な地殻深部物質試料として,ベトナム・紅河剪断帯~コンツム地域,南極・セールロンダーネ山地,モンゴル・ハンガイ山地,インドネシア・ジャワ島,スリランカ・ハイランド岩体,ミャンマー・モゴック帯,オマーンの変成岩について解析し,黒瀬川帯・日高変成帯などの国内における地殻深部由来の変成岩についても精密解析を実施した.これらの様々な地質背景を持つ変成岩試料について,微細包有鉱物を含む全構成鉱物の相同定を行い,極微小領域精密年代測定とあわせて,変成履歴の精密解析と相平衡条件を確定するための実験岩石学的解析を実施した.また,地殻深部物質との物質循環が想定されるマントル物質についても解析するため,大陸衝突帯深部由来のカンラン類や火山岩中のカンラン岩ゼノリス,ならびに超高温・超高圧変成岩について,熱履歴と平衡条件の実験岩石学的解析を実施した.その結果,現時点で世界最高圧力と考えられる天然岩石試料の形成履歴が明らかになった.これらの成果は,国内誌・国際誌に24編(印刷中を含む)の学術論文として公表し,残りの成果も順次発表予定である.
微小領域精密解析による変成作用の全時相・全反応プロセスの解明にむけて,25年度までに確立した極微細鉱物の同定・解析のための分析手法を深化させ,全変成領域の変成岩類について精密年代測定と合わせて解析を継続する.研究代表者の所属先にこれまで配備されてきた先端分析装置群に加え,25年度末に新たにLA-MC-ICP-MSが設置され,微小領域の同位対比分析および同位体年代測定が可能となった.従って,26年度は,マントル物質および超高温・超高圧変成岩類の解析にLu-Hf系,Re-Os系等の新たな同位体分析を加味し,地殻-マントル間の物質循環を含め,超高深度由来の岩石に関する熱履歴・変成履歴解析を実施する.25年度以降は,多様なテクトニクス場における変成岩形成プロセス(空間的-時間的変動過程)を解明し,地殻形成テクトニクス(オロゲン)の実態を明らかにするための研究を実施しているところであるが,26年度以降は太古代~顕生代の超大陸変動プロセスに関する新たなモデル構築にむけて研究を継続し,アジアにおける地殻~マントル物質精密分析に関する研究拠点形成をめざす.
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (24件) (うち査読あり 24件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (16件)
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