研究概要 |
昨年までの研究において,水質変成を受けた石質隕石中に三次元規則配列したマグネタイトコロイド結晶を発見した。マグネタイトに磁化を持ち,強い粒子間引力が作用する粒子が規則配列するという観察事実は,コロイド科学の常識では説明ができない。宇宙空間におけるコロイド結晶形成過程の解明には,微小重力環境におけるコロイド粒子の振る舞い,特に粒子間相互作用を明らかにする必要がある。本実験では,・コロイド結晶の分野でよく使われるポリスチレン粒子(直径3μm)をコロイド粒子として使用し,分散溶液中におけるコロイド粒子の拡散係数が溶液状態に応じてどのように変化するかを,微小重力環境下において測定した。手法としては,脱イオン処理した分散溶液と未処理の分散溶液を準備し,溶液中のコロイド粒子のブラウン運動を追跡し,複数の粒子の初期位置からの移動距離の自乗平均から拡散係数を求めて,それぞれの結果を比較した。その結果,未処理溶液の場合の拡散係数の測定値は理論式(アインシュタイン・ストークスの式)とほぼ一致したのに対し,脱イオン処理をした溶液の場合は,拡散係数が2倍程度小さくなった。この結果は,溶液状態を敏感に反応して粒子間相互作用が変化したことを示している。これらの研究は、現在進めているレーザーピンセットで粒子操作した系でも適用できよう。 これらの基礎研究の方法は隕石などの宇宙物質の創世や変質だけでなく、バイオミネラリゼーションで多い自己組織化による結晶化の研究にも適用出来よう。
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