研究概要 |
昨年度までは,コンドリュールを構成する主要な鉱物のひとつであるフォルステライト(Mg_2SiO_4)のガスジェット浮遊融液結晶化実験を実施した。その結果,フォルステライト融液は数100K~1000Kもの大過冷却状態から,わずか0.1秒程度で急速凝固することが明らかとなった。このような急速凝固の場合,平衡状態で時間をかけて成長したフォルステライトと比べ,結晶欠陥,不純物の取り込み,キャリア濃度などが異なる可能性がある。これを確認するため,前回プログラムで合成した急冷凝固フォルステライトに対し,カソードルミネッセンス(CL)による分析を行なった。3つのサンプルについてCL分析を行なったところ,そのうちのひとつから未同定ピークを検出した。これらは,過去の研究で知られていた不純物Mh^<2+>などに依るものとは異なる。この未同定ピークは,結晶構造内の微細欠陥の存在を示唆している可能性がある。 天然の限石に含まれるコンドリュールは多成分系であり,凝固過程において元素分配は避けられない。本研究では,Mg-Feオリビン(フォルステライトMg_2SiO_4とファヤライトFe_2SiO_4の固溶体)のフェーズフィールド計算コードを開発し,界面不安定によるオリビンバーの形成と冷却速度の関係について調べた。その結果,一方向凝固の空間二次元問題の計算を行ない,界面不安定によりリムからオリビンバーが生じる様子を再現した。 このよう、理論と実験から多成分系からのコンドリュール組織が再現できるようになった。これは世界で最初の快挙であり、天然のコンドリュールでも、従来の考えに反して、短時間に高速で結晶化したことを強く示唆する。
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