研究課題
過去のプレート収斂域に分布する地下深部岩石に残された流体活動の直接的(流体包有物)・間接的証拠(多相固体包有物:Multi solid inclusions:MSI)を物質科学的に解析し、以下の成果を得た:1)地下15-60km深度で形成された三波川変成岩の主片理と平行に発達する石英脈中の流体包有物に対し、組織学、マイクロサーモメトリー、Ramann分光学を展開し、流体包有物の獲得時期を推定するとともに、それぞれの時期の流体包有物の塩濃度・化学種の特定を行った。その過程で、沈み込みの初期に石英中にトラップされた流体包有物がその後の加圧で環状に変形した流体包有物を発見した(Yoshida & Hirajima, 2012)。さらに、石英脈中の流体包有物をクラッシュリーチング法によって濃集し、その主要・微量元素を分析した結果、変成岩に伴う深部流体は高い塩濃度を示すにもかかわらず高い(Li+B)/Cl比を示すことが判った。この特性は、現在の西南日本前弧域の鉱泉水や有馬型熱水の化学組成特性と一致した(網田他,2005; Ohsawa et al., 2006; 風早ほか, 2011)。2) 極端に低い地温勾配下の沈み込み帯で形成されたキルギス共和国Makbal Complexの超高圧変成岩中のザクロ石に包有される、緑簾石 +石英 ± 藍晶石 ±Na雲母から成るMSI全体の化学組成はおおむねローソン石に一致することを見出した。さらに、上記MSIは超高圧時にはローソン石であったが、岩体が地下60km(2Gpa)程度まで上昇・減圧した際にローソン石がMSI構成鉱物に分解するとともに、相当量の流体が上昇する超高圧変成岩から放出されたとの考えを得た。この所見はOrozbaev et al., として第34回万国地質学会(オーストラリア)・日本鉱物科学会年会(京都)などで講演した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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