研究課題/領域番号 |
22244069
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩森 光 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80221795)
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研究分担者 |
横山 哲也 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00467028)
中村 仁美 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (60572659)
平田 岳史 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10251612)
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キーワード | 沈み込み帯 / スラブ / 流体 / マグマ / マントル |
研究概要 |
本年度は、昨年度に導入されたフェムト秒レーザーアブレーション装置と既存のICP-MSを用い、火山岩、変成岩、鉱床岩などの全岩および構成鉱物試料の微量元素組成の分析方法を確立すべく、複数の手法を組み合わせて手法構築を行った。まず、全岩試料については、標準試料を用いて岩石粉末ペレットを作成し、検量線法によって分析ルーチンを作成した。プラスチックパイプ(内径約3mm)に岩石粉末を詰め、プレスして小型ペレットを作成した。このペレットを、レーザーのライン分析を繰り返すことによって面分析し、十分な総カウントと感度を得る条件を探した。その結果、火山岩や変成岩の解析に必要なおよそ30元素について、誤差10%~20%(繰り返しのばらつき)を安定に得る条件を求めた。XRF分析によって予めCaおよびSiの含有量を求めることにより、内標準とした。また、標準ガラス試料、標準岩石試料とともに、試料を溶液化し、ICP-MSで濃度測定し、クロスチェックを行い、繰り返し誤差の程度で確度があることも確認した。 この方法を応用し、日本列島の第四紀火山岩、特に中部地方から東北地方南部については、十分な密度でデータを得た。これらのデータから、独立成分統計解析を行い、マントルウエッジ、スラブ由来流体、混染源としての地殻成分などの独立成分とその組成を同定をすすめている。同時に、中部地方にみられるアダカイトの成因について、微量元素組成と同位体システマティクスを用いた定量的解析を進め、これらの岩石が冷たいスラブからの多量の流体と、柘榴石の安定領域での比較的低い部分溶融によって生じたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、レーザーを用いた全岩微量元素組成測定方法を確立し、それに基いて、火山岩および変成岩のデータを得ることができた。また、データから、日本列島下のマグマ生成(温度圧力条件、流体組成・量、マントル組成)を区別することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに蓄積されたデータを解析することによって、(1)スラブ由来流 体の量と組成の同定、(2)それらを考慮したマントルのpristine な組成推定、(3)(2)の島弧スケールでのマッピングを進める。特に、Independent Component Analysis (ICA; 独立成分分析)を用いた方法によって解析を行い、流体成分、マントル成分の分離をはかる。日本列島についてこれらの試みがうまく進めば、それを全世界の島弧に応用し、グローバルなマントルマッピング、いわばgeochemical tomographyに結びつける試みを行う予定である。そのためには、PetDB、GEOROCなどのデータベースを活用する。最終年度であるため、これらの出版を順次進める。
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