研究概要 |
本年度は,本研究期間3年間の基盤となる初年度四項目計画を実践し,以下の成果が得られた. 1.希少原子内包(@)フラーレンの合成:ダブルプラズマ電子ビーム装置パラメータの中で,空のC60への照射窒素イオンエネルギーを決定する基板バイアスを-90V,窒素ガス圧力を25Paに制御調節した結果,空のC60に対するN@C60の合成純度を圧倒的世界最高値の0.25%まで上昇させることに成功した.また,開放ミラー磁場中ECR放電プラズマを用いるハイブリッドスパッタリング法により,C60への照射Ni+イオンエネルギーを35~40eVとした場合にNi@C60の質量スペクトル検出強度が最大となることを観測し,Ni@c60の世界で初めての合成を確信するに至っている. 2.高品質の構造制御された単層カーボンナノチューブ(SWNT)合成:強磁性金属触媒が残留しない高品質SWNTの合成を目指し,非磁性金属触媒であるAuを利用して拡散プラズマCVD中で微量の水素添加を行ったところ,(6,5)SWNTが支配的なカイラリティ分布の極めて狭いSWNTの選択合成に世界で初めて成功した.この結果は,今後の空及び内包SWNTの真性磁気特性と磁性半導体特性の解明研究にとって極めて重要である.また,半導体優先成長機構の考察を行った. 3.内包SWNT薄膜デバイスの電気特性:拡散プラズマCVD法を用いて二電極間にネットワーク状にSWNTを合成しイオン照射法によりCs@SWNTの薄膜FETを作製した結果,n型動作することが判明した.超伝導現象の追究には金属性SWNTが必須であるので,ゲル電気泳動法により金属-半導体分離を行った. 4.DNA@SWNT/DWNT(二層ナノチューブ)のバイオ・医療応用への準備:薬剤伝達システム(DDS)応用を目指して,(ナノ粒子-DNA)@SWNT/DWNT創製に必須のイオン液体を用いた気体・液体界面プラズマを生成し,界面電場構造を制御することにより可溶性Auナノ粒子-DNA複合物質の合成に成功した。
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