研究課題
昨年度に引き続き、比較的弱い連続光による有機半導体・絶縁体界面に注入されたキャリアのゲート電圧変調分光スペクトル(CMS)を反射型の配置で精度よく測定した。今年度は、ジナフトチエノチオフェン薄膜を用いた電界効果トランジスタに焦点をあて、系統的な測定を行った。ルブレン単結晶とは異なり、このデバイスは100 nm程度の薄膜としたのでデバイスを構成する多層膜内での多重反射による干渉効果による強度変調はほとんど観測されることはなかった。ジナフトチエノチオフェンに比べて、アルキル鎖を導入したアルキルジナフトチエノチオフェンはより高い電荷移動度を示すため、アルキル鎖の鎖長の異なる試料について電荷移動度とCMSを測定した。その結果、1.8 eV付近から立ち上がるホールの吸収スペクトルを得ることができた。アルキル鎖のないデバイスではホールの吸収スペクトルにわずかに振電構造が見られたのに対して、アルキル鎖を導入したデバイスではまったく振電構造は観測されなかった。また、アルキル鎖の長さをC8からC12まで変化させたところ、スペクトルの立ち上がりがより低エネルギー側にシフトし、高エネルギー側に顕著に吸収強度が増大することが明らかとなった。そこで、Holsteinモデルに基づいたシミュレーションによる検討を行い、スペクトル形状のアルキル鎖長依存性を含めてスペクトル形状の定性的な理解に至った。X線回折によればアルキル鎖を導入することにより、ジナフトチエノチオフェン分子の面間の配置がより揃うように配列することが分かっている。したがって、このスペクトル変化は、アルキル鎖の導入に伴ってトランスファー積分が増大し、非局在性が強くなったことが起源であると結論した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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