研究課題/領域番号 |
22245004
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
大島 康裕 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 教授 (60213708)
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研究分担者 |
長谷川 宗良 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (20373350)
水瀬 賢太 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (70613157)
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キーワード | 原子・分子物理 / 物理化学 / 分子分光学 / 強レーザー場 / フェムト秒化学 |
研究概要 |
本研究は、分子特有の運動自由度である振動と回転に着目しで、最も基本的な物理学的実存である波動関数を実験的に決定する方法を確立し、さらに、量子状態をデザインどおりに作り出す制御技術の獲得を目的としている。本年度は、下記4点の成果があった。 1)分子運動の状態確率分布の時間発展を追跡する「時空間4次元イメージング」のための装置立ち上げを行った。 ノズルソース部、相互作用部、および、検出部から構成される真空チャンバーを組み上げ、TOF質量スペクトルを測定した。クーロン爆発による多価イオンの生成が確認されており、現在、イメージング検出の調整を行っている。 2)高強度の極短パルス光と分子との相互作用によって量子状態分布を非断熱的に移動する方法論の開拓の一環として、状態選択的プローブを利用した独自の実験的方法論により、ベンゼンにおける回転運動に関する励起プロセスの詳細な追跡を実現した。 3)振動量子波束の制御に関しては、高強度極短パルス光によって分子クラスターの分子間振動をコヒーレントに励起することに既に成功している。特にNO-Arについて2次元振動量子波束の時間発展を厳密に解くためのプログラム整備を行ない、実測データを良く再現することを確認した。 4)ナノ秒コヒーレント光源の活用も進めており、ベンゼンを含む分子クラスターに関して、高分解能電子スペクトルの測定を行った。最も結合の弱いベンゼン-He系については,分子間振動励起状態への振電遷移を初めて観測することに成功し、特に、He原子が1個ついた系では大規模な構造変形運動によるトンネル分裂を見出した。H_2とのクラスターでは、H_2の2つの水素が入れ替わる運動が存在することを明らかにし、クラスター内でのH_2分子の平均的な配向が振動状態によって大きく異なることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、本年度中に分子運動の状態確率分布の時間発展の観測を行う予定であった。イメージング検出系の調整に予想以上に時間が掛かっているために、若干、研究の進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
データ取得ソフトの整備を進めることによって、イメージング検出系の調整を早急に終了させる予定である。この点がクリアーされれば、その他の実験設備は既に整備が完了しているので、当初の予定通りに分子運動の状態確率分布の時間発展の観測に取り掛かれると考えられる。これと並行して、量子状態選別部の整備やマイクロ波とフェムト秒パルスの同期の実現も進め、より高度な量子波東制御に取り組める体制を構築する。
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