研究課題/領域番号 |
22245004
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
大島 康裕 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 教授 (60213708)
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研究分担者 |
長谷川 宗良 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (20373350)
水瀬 賢太 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (70613157)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 原子・分子物理 / 物理化学 / 分子分光学 / 強レーザー場 / フェムト秒化学 |
研究概要 |
本研究は、分子特有の運動自由度である振動と回転に着目して、最も基本的な物理学的実存である波動関数を実験的に決定する方法を確立し、さらに、量子状態をデザインどおりに作り出す制御技術の獲得を目的としている。本年度は、下記4点の成果があった。 1)高強度な極短パルス光と分子との相互作用によって量子状態分布を非断熱的に移動する手法の開発を行なってきているが、NO分子を対象とした研究において、量子波束の位相・振幅情報の実験的決定、パルス対励起による回転状態分布の高速制御を実現し、縮重状態におけるコヒーレント励起過程に特有な波動関数の位相関係を明らかにする等の結果を得た。 2)ベンゼンを含む分子クラスターに関して、単一縦モードナノ秒パルス光源を利用した高分解能電子スペクトルの測定を行った。特にH2とのクラスターについて、H2がほぼ自由に回転していることを明らかにし、内部回転に対するポテンシャル障壁の値を推定した。また,励起状態における緩和速度をスペクトル線幅から定量的に見積もった。 3)コヒーレント状態分布移動の新手法としてチャープパルスを利用した非共鳴誘導ラマン分光を提案した。さらに、当分光法を実現しうる新奇なコヒーレント光源として、単一縦モード半導体レーザーからの出力を位相変調し、ファイバーアンプにて適当な強度まで前置増幅した後、パラメトリック増幅にて周波数チャープした高強度ナノ秒パルス光を出力するシステムを製作した。 4)分子運動の状態確率分布の時間発展を追跡する「時空間4次元イメージング」のための装置の設計と製作を行った。装置の組み上げは完了し、イオンイメージの取得が可能な状況となっている。現在、データ取得ならびに画像解析のためのプログラム整備を進めている。さらに、2次元イオンイメージングに関して新しい配置を考案し、回転量子波束運動の時間発展を実時間実空間で観測することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
回転量子波束運動の時間発展を実時間実空間観測を達成することができたこと、また、コヒーレント状態分布移動の新手法を実現しうる新奇なコヒーレント光源の開発を完了したことから、おおむね順調な進展と評価される。
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今後の研究の推進方策 |
非共鳴な高強度極短パルス光による非断熱回転励起においては,高度なコヒーレント制御・観測が実現できる体制が整っているので、イオンイメージング技術と結合した回転運動の画像化等への展開を目指す。また、非断熱励起を振動自由度へ適用する研究も順調に進行しており、分子回転で発展させてきた様々な方法論を利用して、高振動励起分子の生成や構造異性化の誘起などへ繋げる。 また、ナノ秒チャープ光源が完成したので、新規な断熱分布移動の実現に速やかに着手する。これによって、クラスターの内部運動に関する振動準位構造を詳細に特定し、分子間振動に関する量子状態制御を実施する。
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