研究課題
メビウス"反"芳香族分子の合成を行った。当初、[28]ヘキサフィン金属錯体や[36]オクタフィリン金属錯体などの剛直な構造のメビウス芳香族分子を酸化や還元して、対応するメビウス反芳香族分子を合成する計画であったが、今まで、こうした試みでは、いずれも場合も化合物が分解するのみで、成功していなかった。[26]ヘキサフィンに酸素存在下でリンを配位させることにより、リン酸アミド錯体が得られ、リン酸アミドの強い電子求引性により、還元レベルの高い[30]ヘキサフィリンが、初めて実現された。また結晶構造から捻れたメビウストポロジーがわかり、^<1H> NMRスペクトルで、環の内側のプロトンが11.14ppmに極端に低磁場シフトしており、結晶構造と合わせてメビウス反芳香族分子であることを明らかにした。また、メビウス芳香族分子の不斉合成を行った。[28]ヘキサフィンパラジウム錯体の光学分割に成功し、その後、様々な光学活性なパラジウム塩を用いて金属錯化を行ったところ、R-bis(diphenyl phosphino)binaphthylを配位子にもつパラジウム塩を用いた場合に、最高28%eeで光学活性[28]ヘキサフィリンパラジウム錯体の合成に成功した。メビウス芳香族分子の系間交差の速度や、系間交差により生成する励起三重項のスピン分極などについて詳しく調べた。メビウス芳香族分子は、まだまだ数が少なく、本格的な研究を行うためには、様々な分子系での例を増やす必要がある。そのため、メビウス芳香族分子のより簡便で普遍的な合成法を確立した。例えば、ペンタフルオロフェニル基を置換基にもつ[26]ヘキサフィンは適度に加熱するだけでN-fusion反応を起こし、ワンタッチでメビウス芳香族分子であるN-fused[28]ヘキサフィリンを与えると予想し、実際に単離した。
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