研究課題
2番目のメビウス“反”芳香族分子の合成を行った。まず、 メゾ位にペンタフルオロフェニル基を持つ[32]ヘプタフィリンと3塩化リンの反応でリンを配位させたところ、8の字型構造を持つ非芳香族のリン錯体が得られた。続いて、メゾ位に2,6-ジクロロフェニル基を持つ[32]ヘプタフィリンと3塩化リンの反応を試みたところ、ヒュッケル芳香族の[34]ヘプタフィリンモノリン錯体とメビウス反芳香族性の[34]ヘプタフィリンモノリン錯体を単離した。後者の錯体については、結晶構造解析により捩じれた構造を取っていること、1H NMRスペクトルの解析によりパラトロピック環電流が観測されたこと、またNICSの値が正になることなどから、反芳香族性を持つことが示された。興味深いことに、後者の錯体をアセトニトリル中で加熱すると前者の錯体に定量的に変化することが分かった。これらの結果より、この反応では、メビウス反芳香族性分子が、速度論的生成物として生成すると結論された。
1: 当初の計画以上に進展している
環拡張ポルフィリンがメビウス芳香族分子生成の極めて優れた前駆体であることが、いろいろな実験により確立されてきた。今回の実験により、更に構造的にも電子的にも不安定なメビウス反芳香族分子も合成可能であることが示され、環拡張ポルフィリンのポテンシャルは、当初の予想を越えて高いことが分かってきた。同時に、環拡張ポルフィリンが金属の配位子として、極めてユニークで、これまでにない新しい金属錯体の生成を可能にすることも分かっており、有望である。
例えば、メゾ位にペンタフルオロフェニル基を持つヘキサフィリンは、26πでは平面長方形でヒュッケル芳香族性を示し、28πでは捩じれたメビウス芳香族性を示すことが分かっている。しかし、28πヘキサフィリンは構造が柔軟で室温で様々な構造の動的平衡になっていることも分かっているし、平面型コンフォメーションを取ると、強い反芳香族性になることも分かっている。こうした性質を利用して、ヘキサフィリンに長鎖アルキル基を導入して、液晶性の28πヘキサフィリンを合成する計画である。π―π相互作用により、こうするとエネルギー的にすこし不安定である平面構造が優先されてパッキングする。これらの分子は反芳香族性のため、HOMO-LUMO Gapが小さくなり、電子移動度の大きな材料となる可能性が高い。
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