研究課題/領域番号 |
22245007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平尾 俊一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90116088)
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研究分担者 |
雨夜 徹 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20397615)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スマネン / πボウル / レーザー / ボウル反転 / グラファイト / メタロセン |
研究概要 |
フラーレンの部分構造で示されるボウル型分子(πボウル)は、非平面π共役系におけるフラーレンやカーボンナノチューブに次ぐ第3の鍵物質群として考えられている。本研究はπボウル「スマネン」を基軸とし、その有機合成・材料的ポテンシャルを顕在化させ日本発のカーボンナノサイエンス・テクノロジーとして世界に発信することを目指した。 スマネンはボウル型のπ共役系構造を有するため、歪みエネルギーを内部に蓄えていると考えられる。そこで、スマネン誘導体にレーザー照射することにより、変性させることを検討した。スマネンモノオンイミン薄膜へのレーザー照射の結果、グラファイト様物質に変性していることがラマンスペクトル等の分析より明らかになった。さらに、その導電性は数S/cmであった。なお、対応するフルオレノン誘導体では、そのような導電性は示されなかった。 スマネンのベンジル位が酸化されたトリオキソスマネンに対する置換基導入反応を検討した。アルキルリチウムの付加反応では、選択的にconvex面からの付加反応が進行した。生じたアルコールをトリメチルシリル基で保護すると一部ボウル反転することも判明した。そのボウル反転の速度および活性化自由エネルギーを2D NOESYにより求めた。 スマネンの芳香環部位の変換反応についても検討した。その結果、フリーデルクラフツアシル化やニトロ化では、反応条件次第である程度選択的に一置換体を合成できることがわかった。 スマネンのベンジルアニオンがシクロペンタジエニル様アニオンであることに着目し、スマネニルメタロセンの研究を展開している。昨年度合成した二塩化シクロペンタジエニルスマネニルジルコノセンの触媒活性を調べたところ、1-ヘキセンの重合に有効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スマネンの分子変換技術や遷移金属錯体合成研究が順調に進展しており、また、スマネン誘導体の薄膜へのレーザー照射による導電性物質への変性など、興味ある知見も得られてきたので、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
スマネンを用いることで初めて達成され得るユニークな構造やπ共役系を有する炭素共役系分子、機能性錯体触媒、電子材料の創製に取り組む。学術的のみならず産業的にもインパクトのある研究を展開する。
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