研究概要 |
当初の研究目的は、平面4配位など特殊な4配位環境に存在するCr,Coなどを含んだ新しい酸化物を合成し、その構造・物性を明らかにすることであった。 現在のところ、幾つかのCo系のペロブスカイト前駆体ACoO3(A=Sm,Nd,Sr,など)を共同研究者と共に合成し、それに還元処理を施して、どのような構造変化が起こるかを探索した。X線回折実験から判断すると、構造は大きく変わったが、従来予想されていた単純な金属の平面4配位構造はとっていない模様である。さらに違う構造が発現した可能性があり、現在更なる実験を行っているところである。Cr系酸化物に関しては、高圧装置の運用が開始していないため、まだ本格的な探索が始動していないが、申請者は固体化学の他の観点から興味深い他の酸化物およびそのアニオン操作反応を試みた。例えばBaSnO3の還元的フッ素化によるA-サイトカチオン選択的除去、V-Mo系酸化物の還元・構造変換、Ba-Ni系酸化物のアニオン不定比性の制御など様々な方面で探索を行った。 その結果、中でも、BaSnO3の研究では、通常では珍しい還元的フッ素化反応を施した結果、構造が大きく変わり、放射光施設で得たデータを下に詳細な構造解析を行った。得られた生成物の組成はBaO.5SnO2-xFyであり、CaTa206などと似たAサイト欠陥方ペロブスカイト構造をとる。磁気特性もフッ素化後が変化しており、大変興味深い。
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