研究課題
生体分子の網羅的解析法は、既に多くの研究機関で汎用され、生体機能の解析に必要不可欠な方法である。このようなバイオチップの検出には、主に光学的手法が用いられているが、検出装置の小型化が困難、光を吸収、遮蔽・放出する物質が材料を使えないと言った問題を抱えている。そこで、本研究では、CCD素子に比肩あるいは凌駕し得る新しい電気化学イメージングデバイスの開発を目指した。この電気化学イメージングデバイスには、局所レドックスサイクルを誘導してシグナルを取得するシステムが組み込まれており、申請者が開発した独自の電気化学測定システムである。本年度は、この多点電気化学測定システムの応用として、3次元培養組織のスクリーニング、ナノ流路を組み込んだ超高感度システムの開発を行った。3次元培養組織として、胚性幹細胞(ES細胞)を3次元培養して作製した胚様体(EB)を用いた。ES細胞は、心筋、神経などの様々な細胞に分化するが、この分化の評価を、開発した測定システムを用いて行った。培養時間や大きさが異なるサンプルを測定したところ、これらに依存した電気化学シグナルの取得に成功した。現在、分化に関する考察を行っているが、開発した測定システムを用いる事で、3次元培養組織のスクリーニングが可能であると言える。また、超高感度な測定を行うために、ナノ流路を組み込んだデバイスを作製した。このデバイスを用いる事で、電気化学シグナルを飛躍的に増幅させる事に成功した。本システムは、網羅的な電気化学アッセイが可能であり、その点で独創性の高い研究である。電気化学測定による細胞のスクリーニング、細胞の多点電気化学イメージングが可能であり、これまでに報告されていない新規のデバイス・システムである。本研究は基盤研究(S)「多機能ナノ電気化学顕微鏡システムの創生」の継続課題として行われており、上記の研究に加え、本年度も引き続きデバイス評価のための多機能電気化学顕微鏡の開発を行った。この研究においては、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)と走査型電気化学顕微鏡(SECM)の融合に成功しており、世界でトップレベルの成果を発表する事に成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた研究以外にも成果が出ており、トップジャーナルでの報告が行われた、また、CMOSを用いた新たな電気化学イメージングデバイスの開発に繋がっている。本研究は、様々な応用・展開が行われており、その点で、当初の計画以上に進展していると言える。
さらなる高感度が目指したデバイス・システムの開発を行う。また、柔軟な素材を用いたデバイスを作製する事で、バイオインターフェースを目指した計測を可能にする。引き続き、多機能ナノ電気化学顕微鏡システムの開発も行い、これまで難しかった生体試料や柔らかいサンプルの高解像な計測を実現する。この測定システムを用いる事で、細胞膜のナノメートルオーダーでの可視化など、これまで報告されていなかったイメージングを行う。
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