研究課題/領域番号 |
22245014
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西山 久雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40135421)
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研究分担者 |
伊藤 淳一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (20402480)
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研究期間 (年度) |
2010-05-31 – 2015-03-31
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キーワード | 不斉触媒 / 不斉合成 / 有機金属 / 環境調和 / 光学活性 |
研究概要 |
有機合成は、ものつくりの原点であり、分子結合生成と解離を人工的に行える科学技術として普遍性を有し、極微量の触媒を用い100%で進む高原子効率ならびに省エネルギープロセスに到達すること望まれる。また、通常レベルをはるかに越える高性能かつ超効率的不斉合成触媒と反応を創出することが本研究の目標である。 本研究では、新しい遷移金属錯体の還元種を鍵触媒として、市販され入手容易な基質用いたカップリング等の大量合成に耐えうる実践的な力量ある炭素分子骨格構築法ならびに官能基変換法を開発する。電子豊富な還元状態にある金属錯体たとえば低原子価の錯体の反応系中で発生させ、ここから起動させる反応と連続的に起こす炭素炭素結合生成や官能基変換など新規な反応を研究するものである。オレフィン骨格をヒドロメタル化や元素メタル化してはじまる一連の還元やアルキル化反応を機軸に、連続的に炭素骨格を合成する高原子効率な方法を総合的に研究する。 本研究の四年度においての実績は、継続してボリル化を検討していたが、ビスオキサゾリニルフェニルロジウム錯体による不飽和カルボニル類の不斉共役ボリル化を正論文にまとめるため引き続きアミド類への基質拡大に勤め成功した。さらに、ロジウム錯体を用いて末端アルケンの不斉1、2-ジボリル化に成功し99%に達するエナンチオ選択性を達成した。基質としても芳香族に脂肪族も加え、アリルエーテル、3級アリルアミンなど幅広い基質で良好な収率かつエナンチオ選択性で1、2-ジオール類を合成することに成功した。また、新規ビスオキサゾリニルフェニル骨格をコバルト元素に結合させることに成功した。ケトンのヒドロシリル化反応に対して中程度のエナンチオ選択性であるが触媒活性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、極微量の触媒を用いて高原子効率ならびに効率的不斉合成を達成するのが目標であり、そのためキラル環境を有する多座配位子ならびに有機配位子、窒素系配位子などを組み合わせて用いるところに特徴がある。初年度には、鉄およびコバルト錯体を用いた不斉ヒドロシリル化還元法を見いだし、かつシングルキラル触媒で両方のエナンチオマーを合成するのに成功している。これはAngew. Chem. Int. Ed.誌のホットペーパーに選ばれた。また、二年度には、ルテニウム錯体によるケトン類に不斉還元に成功し、微量光学活性アルコールの添加がエナンチオ選択性の増進をもたらす現象を見いだした。これは、Chem. Commun.のインサイドカバーに選ばれた。また、三年度にはさらにビスオキサゾリニルフェニルロジウムならびにルテニウム錯体で合成化学的に有用な反応開発ができた。配位子を金属に強固に結合させた分子錯体触媒が有効であることを示すことができ、さらに高度な不斉誘導にも成功している。また、触媒過程に関わる問題として、イリジウム錯体を用いるCH結合切断によるアルキル錯体の合成に成功し新しい触媒反応の糸口を見つけた。また、高原子価錯体を出発にしていることもあり、還元過程もしくはσーボンドメタセシスを起動反応とする系を確立できつつある。このことは、ジボランを活性化させ不飽和エステル等に共役付加させることに成功したことからも言える。正論文をTetrahedro nに掲載することができた。四年度には、コバルト錯体の合成に成功しており触媒活性があることを発見しOrganometallicsに発表した。ロジウム錯体においてアルケンの1、2ージボリル化と連続的な酸化によって1、2-ジオールを合成できることを示した。Angew. Chem. Int. Ed.に発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
光学活性ビスオキサゾリニル配位子を有するコバルト、鉄、ロジウム、ルテニウム錯体の錯体反応ならびに不斉合成反応への応用について継続的に展開する。ロジウム錯体では、ボリル化の適用範囲を多置換アルケンに拡げ各種基質を検討し、光学活性置換ジオール類の合成を進める。また、ほとんど手をつけていない、白金ならびにパラジウム錯体の合成と錯体反応を検討し、不斉C-H活性化へ展開を考えている。触媒量の低減、回収も検討する。また、最終年度に向け、新たな三座配位子とくにカルベン配位部を有する新規錯体の検討を始める。目標反応を、還元起動型であるが最終的には酸化過程を入れて光学活性エポキシドやジオール合成へ展開を考えている。また、最近ますます進歩しているC-H活性化反応においての不斉誘導触媒の開発にもチャレンジしていく予定である。活性中心を触媒で活性化し遠隔のC-H結合に新たな官能基を導入する方法を探索してみたい。機構解明と触媒効率向上の検討を継続し、最後のまとめに入りたい。
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