研究課題/領域番号 |
22245016
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
茶谷 直人 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30171953)
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キーワード | 炭素-水素結合活性化 / 炭素-水素結合活性化 / 炭素-酸素結合活性化 / 炭素-ケイ素結合活性化 / 炭素-フッ素結合活性化 |
研究概要 |
本研究では、反応性の高い官能基変換に依存した現在の有機合成化学に革新をもたらすべく、炭素を含む不活性結合の触媒的変換反応の開発を目指した。 炭素-水素結合に関しては、N,N-2座配向基を利用するとルテニウムカルボニルを触媒とする飽和炭素-水素結合の環化カルボニル化反応が進行することを見つけることができた。また、この2座配向基は、パラジウムを触媒とする飽和炭素-水素結合のアルキニル化反応にも適用できることも見いだした。炭素-水素結合のなかでも最も不活性な飽和炭素-水素結合の活性化が達成できたことは、注目に値する。さらに、ニッケルを触媒とするベンゼン環の炭素-水素結合の活性化を含むアセチレンとの環化付加反応の開発にも成功した。 鈴木クロスカップリングは、現在の有機合成において欠くことのできない炭素-炭素結合形成法である。求電子剤としては、プロモベンゼン、ヨードベンゼンやスルホン酸エステル類が一般的に用いられてきた。われわれは、ニッケルを触媒に用いると鈴木クロスカップリングが、反応性のきわめて低いアニソールでも進行することをすでに報告している。今回は、活性化剤を添加するとフルオロベンゼン類も求電子剤として働くことを見いだすことができた。活性化剤としては、フッ化ジルコニウムがもっとも有効であり、触媒としてはニッケル錯体のみが活性を示した。この反応は、炭素-フッ素結合の活性化を含んでいる。さらに、ニッケル触媒存在下、アニソール類の炭素-メトキシ結合をヒドロシランで還元することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今まで報告されている炭素-窒素結合の活性化を経るカップリング反応のほとんどが、アンモニウム塩やジアゾニウム塩のように活性化された炭素-窒素結合の切断を含んでいる。これに対して、中性の炭素-窒素結合が活性化される触媒系を見いだすことができた。これは、当初の予想を超えた成果である。さらに2座配向基を用いた炭素-水素結合の活性化は、予想以上の広がりを見せている。今後、大きな発展が期待をされる。
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今後の研究の推進方策 |
炭素-メトキシ結合の活性化は、ホスフィンの構造に大きく依存することがわかっているが、この再検討を行うことにした。これが解決するかどうかは、本反応の合成化学反応として確立できるかどうかがかかっており、ひじょうに重要である。それ以外のプロジェクトに関しては順調に進んでいるので、特に変更すべき点はない。
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