研究課題/領域番号 |
22245021
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
阿波賀 邦夫 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10202772)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 有機エレクトロニクス / 有機半導体 / 有機トランジスタ |
研究概要 |
本研究では、有機ラジカルなどの開殻分子に対する製膜法や電極との接合作製技術を高めながら、これらがつくる絶縁相(パイエルス相、電荷秩序相およびモット相)に対して、積極的に光照射や電子・イオン注入を行うことによってその基底状態を揺さぶり、電子やエネルギー移動を通じて時空間発展する非線形現象を新しい電子機能発現の原理ととらえ、開殻化合物を利用した革新的な有機エレクトロニクスを構築することを目的としている。 これまでの研究により、フタロシアニンを代表とするポルフィラジン化合物やサルフラワーと呼ばれる分子の安定性と溶媒不溶性を利用して、イオン液体をゲート絶縁体とする電気二重層有機トランジスタの開発に成功し、高い移動度や、低エネルギー駆動を実現した。今年度は、このイオン液体電気二重層トランジスタについてイオン液体依存性を丹念に調べた。その結果、イオン液体のキャパシタンスが増加するにつれて移動度が減少する一方、またホール注入電場はイオン液体中のアニオン成分のルイス塩基性によって支配されることを明らかにした。前者は、イオン液体が界面でつくる電気2重層からの電場とキャリアの移動方向が直交するためと考えられる一方、後者は、ホールとアニオンが界面で電気2重層をつくることを強く示唆している。このように、近年注目を集めている電気二重層有機トランジスタについて、極めて分子論的に作動機構を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
開殻化合物を利用した革新的な有機エレクトロニクスを構築することを目的としているが、これらとイオン液体を組み合わせて電気2重層とトランジスタが極めて有望であることを見出し、さらにその作動原理までを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、有機半導体とイオン液体の組み合わせに留意しながら、電気2重層とトランジスタをされに発展させるほか、光電流変換などにもこの作動機構を持ち込み、新しい光有機エレクトロニクスを開拓する。
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