研究課題/領域番号 |
22245025
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
阿部 二朗 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70211703)
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キーワード | フォトクロミズム / イミダゾール二量体 / 実時間ホログラフィー / キラル / 光スイッチ |
研究概要 |
平成23年度は、光照射のON、OFFにより偏光、位相などを高速に制御して光情報処理を可能とする高速フォトニクス材料の創出に挑んだ。 専用眼鏡を使うことなく立体動画映像を再生する方法の一つであるホログラフィー方式空間像再生技術は、被写体から発せられた光の波面そのものを再生する方式であり、眼が疲れず、自然な立体視ができることから、「究極の立体映像方式」と言われている。しかし、その実現には撮像・表示素子のサブミクロン化をはじめとして多くの困難を伴う。高速フォトクロミック分子は光が当たっている時にのみ透過率や屈折率が変化し、光を遮ると速やかに光照射前の透過率や屈折率に戻るため、実時間ホログラム材料に適う材料である。スムーズな実時間ホログラムを実現するためには、ビデオフレーム(30msec)より速い速度で屈折率変調を実現しなければならない。本研究では、光応答部位として、人の目の時間分解能と同等の光応答速度を有する[2.2]パラシクロファン架橋型イミダゾール二量体を用い、光照射のみで物体情報を実時間で投影できる実時間ホログラム材料の開発を推し進めた。われわれが新たに開発した高速フォトクロミック分子をドープしたポリマーフィルムの発色体の半減期は室温で17msであり、64ms以内に消色反応が完了する高速フォトクロミック特性を示した。続いてポリマードープフィルムへ回折格子を形成し、干渉光のスイッチングに伴う一次回折光の回折効率変化を検討したところ、書き込み光のスイッチングに同調し回折効率も同等のタイムスケールにおいて変化し、実時間における回折光変調に成功した。さらに、物体を動かすことにより読み出し光で再生された投影画像も連動して動き、ホログラムイメージを実時間で投影することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、光照射のON、OFFにより偏光、位相などを高速に制御して光情報処理を可能とする高速フォトニクス材料の創出に挑んだが、フォトクロミズムを利用した実時間ホログラム材料の開発に世界で初めて成功したことで、高速フォトクロミック材料が持つ大きな可能性を実証するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
研究はほぼ計画通りに進んでいるが、今後の2年間で「キラルネマチック液晶の実時間螺旋ピッチ光制御」を実現する。具体的には、大きな螺旋誘起力を有する新規フォトクロミック分子を開発し、可視光波長と同程度の螺旋ピッチ長を有するキラルネマチック液晶の実現を目指す。
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