研究課題/領域番号 |
22245025
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
阿部 二朗 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70211703)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / イミダゾール二量体 / 液晶 / 光学活性 / 光スイッチ |
研究概要 |
イミダゾール二量体であるHABIのフォトクロミズムは、発色反応は二つのイミダゾール環を結ぶC-N結合の光解離によるTPIRの生成反応であり、消色反応は発色反応により生成したTPIR間のラジカル再結合反応である。ラジカル再結合反応は熱反応であり、光照射により促進されることはなく、熱反応によってのみ消色する典型的なT型フォトクロミック分子である。溶液中におけるTPIRからHABIへの戻り反応は、半減期が濃度に依存する二次反応に従う熱反応であることから、TPIRが消失して完全に消色するまでには数分の時間を要する。これまでに、われわれは二つのイミダゾール環をナフタレンや[2.2]パラシクロファンで架橋することで、TPIRの媒体中への散逸を抑制して、高速なラジカル再結合反応を示す高速熱消色フォトクロミック分子を開発してきた。平成24年度には、新たにビアリール架橋型イミダゾール二量体を合成し、そのフォトクロミック特性について検討を行った。光学活性なビナフチルエーテル架橋型イミダゾール二量体の発色体の半減期は室温で100マイクロ秒と高速熱消色反応を示すが、紫外光照射による発色反応-消色反応の繰り返し耐久性は劇的に向上し、1万回のサイクルを経ても分解生成物がほとんど生じないことがわかった。このように極めて高い繰り返し耐久性を備えた高速フォトクロミック分子は実用的なセキュリティインク材料としての用途が期待できる。さらに、この化合物は光学異性体を合成過程で作り分けることができ、ラセミ体の光学分割が必要ないことから、高度なセキュリティシステムの構築が可能になる。また、フォトクロミック反応に伴い分子構造が大きく変化するために、キラルネマチック液晶のらせんピッチ高速光制御への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、二つのイミダゾール環をビアリール骨格で架橋した新たな架橋型イミダゾール二量体の開発に成功した。この化合物は合成が簡便であるだけでなく、優れた繰り返し耐久性を有するために高度なセキュリティインク材料への応用が期待できる。さらに、当初の計画であった「キラルネマチック液晶の実時間螺旋ピッチ光制御」を実現するための要素を備えた化合物である。
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今後の研究の推進方策 |
研究はほぼ計画通りに進んでいるが、最終年度には「キラルネマチック液晶の実時間螺旋ピッチ光制御」を実現する。具体的には、平成24年度に開発した光学活性なビナフチルエーテル架橋型イミダゾール二量体を汎用的なネマチック液晶に添加することで、可視光波長と同程度の螺旋ピッチ長を有する高速光応答型キラルネマチック液晶の創出を目指す。
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