木質バイオマス成分(セルロース、ヘミセルロース、リグニン)のうち、ほとんど利用されていないヘミセルロースに着目し、プラスチック材料化に関する検討を行った。広葉樹パルプからアルカリによりキシランを抽出し、NMRにより解析を行ったところ、アラビノースなど他の多糖が分岐結合していない、ホモキシランであることがわかった。抽出したキシランを用いて、アセチル基からラウリル基まで一連のエステル化を2種類の方法で行った。一つは、トリフルオロ無水酢酸を用いた不均一反応であり、分子量は低下するが、白色のきれいなエステル化キシランを合成することが出来た。一方、ジメチルアセトアミドと塩化リチウムの混合溶媒に一旦溶解し、ピリジン用いた均一反応では、非常に分子量の高いエステル化キシランを得ることが出来たが、少し着色化していた。合成したエステル化キシランの構造は、1H-および13H-NMRにより詳細に解析するとともに、GPCによる分子量の測定、DSCおよびTGAによる熱的性質の測定を行った。さらに、エステル化キシランを有機溶媒に溶解したのち、キャストフィルムを作製し、機械的物性および光学物性の測定を行った。その結果、エステル基の炭素数が増加するについて、キャストフィルムは非常に高い透明性を示すことがわかった。さらに、エステル化することにより熱分解温度が大幅に上昇すること、エステルの種類を換えることにより破壊強度の大きいフィルムから破壊伸びの高いフィルムまで、様々な物性のフィルムが作製できることがわかった。
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