研究課題
【様々な有機材料からの有機単結晶界面作製】これまでは、BTBT系、DNTT系などのp型半導体やTCNQ及びPDIF-CN2のn型半導体で溶解性が高いものを用いて、様々な高品質の有機単結晶界面を作製してきた。これに加えて、全く新しい化合物DNT-V系を分子合成化学によって開発し、高移動度の新しい有機半導体材料を見出すことに成功した。その結果24年度には、置換によって、グループ内で自由に分子設計を変更できることが可能になったため、分子構造と輸送特性の相関を精度よく調べる強力な研究手段を得た。【有機結晶界面における電荷移動の定量的評価手法の開発】これまでの常圧下のみでの測定では、分子の構造を連続的に変えながら電子物性を変調することができなかったため、本年度新たに、圧力下における有機単結晶電界効果トランジスタのホール効果を含む精密な電子輸送特性測定の手法を開発した。その結果、ルブレンにおける異方的伝導の圧力変化など、興味深い物性が得られた。さらに、ペンタセン系において、ホール効果測定を行い、ホッピング伝導とバンド伝導の境界ともいえる、電子コヒーレンスが不十分な電子状態が室温常圧におい、て実現していることを明らかにした。今後、低温高圧において、バンド伝導にクロスオーバーする過程を実験的に検出することを目指す。分光学測定研究の進展も目覚ましく、ルブレンの低周波領域の交流伝導度において、ドゥルーデ項の観測にも成功した次年度は、有効質量の定量的な見積もりなどから、有機半導体の金属状態の電子のダイナミクスに迫る。【高移動度キャリアダイナミクスを利用した高速有機デバイスの開発】MEMS加工や微小デバイス作製技術を利用した高速応答デバイスの開発に取り組み、三次元型有機高密度界面を利用した構造を実現したため、次年度の高速応答デバイス開発への準備が得られた。
1: 当初の計画以上に進展している
有機半導体トランジスタデバイスの圧力効果について、はじめてホール効果を含む精密な輸送特性測定に成功し、分子結晶構造と電子輸送特性の精密な比較に道を拓いた。また、ペンタセン系において、バンド伝導とホラピング伝導の中間のクロスオーバー現象をはじめて観測し、分子揺らぎとカップルした興味深い電子状態を見出し、有機半導体のキャリアダイナミクスの理解を進めた。これらの成果は、新たな高速応答有機デバイスや高移動度の有機分子材料合成の開発にもつながる、重要な結果である。
今年度得られた、(2)圧力効果測定手法の開発、(2)ペンタセン系における電子のコヒーレンスが失われつつある状態の発見、(3)新しい高移動度有機半導体化合物DNT-V系の開発、(4)三次元型など高速デバイスの開発、(5)分光学研究におけるドルーデ応答の検出、といった重要な結果を発展させて、有機半導体中のキャリアダイナミクスを有効質量の温度変化などの定量的議論をもとに解明する。その結果を、高速有機デバイス開発及び新たな分子開発に結び付け、有機半導体の基礎科学を一段高いレベルへと引き上げる。
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