研究分担者 |
平山 雅章 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 講師 (30531165)
武田 保雄 三重大学, 理工学研究科, 教授 (60093051)
米村 雅雄 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任准教授 (60400602)
田村 和久 独立行政法人日本原子力開発機構, 量子ビーム応用開発部門, 研究員 (10360405)
園山 範之 名古屋工業大学, 工学系研, 准教授 (50272696)
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研究概要 |
優れた出力特性と安定性を実現する全固体蓄電デバイスの実現の鍵は,固体電極と固体電解質の界面でのイオン拡散現象解明にある.本年度に実施した課題とその成果は以下のとおりである.(a)多重層構造制御による新物質開拓:LiMn_2O_4正極,LiFePO_4正極,Li_4Ti_5O_<12>負極について,モデル薄膜電極を作製した.膜厚を10-100nmに制御した際に,膜厚が小さいほど高容量を発現する現象を見出した.表面構造解析から,ナノ化により出現する電気化学現象は,電極界面から数10nmの領域が電極内部とは異なる構造,異なる電気化学反応性を有するためであることを明らかにした.そこで,電極界面から数10nmの領域の構造を,固体固体界面形成により制御し,電池特性の改善を試みた.界面形成による安定性,容量の向上が確認され,界面構造制御が電池材料開発の鍵であることを見出した.(b)新規な電極物質の探索:主に3から5万気圧下、1000-2000℃での反応が可能になる超高圧法を用いて,リチウム含有遷移金属酸化物について,マンガン系と鉄系を中心に三成分相図内の電極材料物質探索を行った。従来のリチウム過剰酸化物戸比較して100-300%程度Liが過剰な組成領域で新たな結晶相を見出し,比較的高い電池高容量を示すことを明らかにした.(c)蓄電池の新たな形態の創出にむけて:制御された固体固体界面から形成される超格子積層デバイスの構築を見据えて,実現の鍵を握る固体電解質薄膜を探索し,Li_7La_3Zr_2O_<12>薄膜の合成に成功した.デバイス化に向けて固体固体界面の最適化が課題となることが見出された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度は,1)多重層構造制御による新物質開拓,2)新規な電極物質の探索,3)蓄電池の新たな形態の創出:固体固体理想界面での電荷交換反応の解明を実施項目とした.1)2)については,積層薄膜合成や高圧力合成の手法を用いて,新しい構造・組成を有する材料を開拓できた.3)については,1)2)で得られた知見を基に超格子デバイスを指向して,電解質材料の作製を着実に進めている.研究全体として総合的に順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに項目1について,理想界面および実用界面(固体液体)の構築,理想界面および実用界面を用いた固液界面での反応機構解析技術は確立した.本年度は項目2と項目3に尽力する。項目2.新物質創成:異なる原子層の積み上げによって物質を構築する手法は、物質合成を自らの手で制御できる唯一の手段であり、物質合成における究極の合成手法である。この多重層積層によって、電気化学特性の発現可能な新物質の探索を行う。項目3蓄電池の新たな形態の創出にむけて:理想界面をもつ積層セルを構築する。単結晶基板上に正極単結晶薄膜、電解質単結晶薄膜、負極単結晶薄膜を積層し、エピタキシャル成長を確認する。これまでの研究において、エピタキシャル薄膜の積層が可能であることは明らかになっている。しかし、電池としての作動が課題となっている。ここには、界面の空間電荷層内の電荷分布に伴い構造変化が誘起され、セルの作動に本質的な影響を与えていることが予想される。この課題の解決のために、固体固体界面の検出手法を開発し、固体界面での構造変化を検出する。固体固体界面での電荷交換反応の解明を進めると同時に、その現象を積層セル構築にフィードバックする。
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