研究課題
太陽光発電の本格普及期である2020年において圧倒的な技術優位を築くため、シリコン薄膜太陽電池技術と、バルクシリコン太陽電池技術を融合化して、最先端の超薄型高効率シリコン太陽電池研究を先導することを目的としている。具体的には、申請者が世界で初めて実現した低温成長微結晶3C-SiCを用いた新型ヘテロ接合Si太陽電池を用いて、厚さ75-100μmのCZ Siウェハで23%以上の高効率を得ることを目標としている。目標を達成するため、(1)ヘテロ・ナノ界面制御による接合特性の改善技術の開発、(2)新規パッシベーション膜の開発、(3)超薄型シリコンヘテロ接合太陽電池のデバイス物理、の三つのサブテーマで研究を実施している。平成23年度は、まずn型の微結晶3C-SiCを用いたヘテロ接合太陽電池の高効率化を検討した。特に、微結晶3C-SiCとSi基板の界面に挿入するa-SiCバッファ層の製膜条件がセル特性に大きく影響していることが分かり、最適化の結果、n-3C-SiC/p-Siヘテロ接合で開放電圧0.710V、変換効率19.2%を達成した。このセルでは、3C-SiCの禁制帯幅が2.2eVとワイドギャップであるため、短波長の収集効率が非常に高いという特質を実証することができた。一方、p型の微結晶3C-SiCを用いたp-3C-SiC/n-Siヘテロ接合についても改善を試みているが、未だ十分な界面特性を得るには至っていないが、変換効率17.0%まで向上させることに成功した。この他、新しいヘテロ接合構造としてSiOを用いたセル開発も進めており、これまでにp型微結晶Si/i-a-SiO/n-Si/i-a-SiO/n-a-Si構造により、開放電圧0.717V、変換効率20.3%を達成した。
2: おおむね順調に進展している
ヘテロ界面に挿入するバッファ層を、キャリアライフタイム測定の結果をもとに最適化し、開放電圧が0.71Vを超す、極めて有望な結果が得られた。nc-3C-SiCを用いたヘテロ接合太陽電池で当これほど高い開放電圧を報告した例は他にはなく、本研究のオリジナリティーと、その有効性が実証された。
現状の変換効率は、20.3%となっているが、変換効率23%を目指すには、短絡電流の大幅な向上が必要である。現在、Si基板として、表面がフラソトなウェハを用いているため、反射損が大きくなっている。今後は、反射損を減少させるため、アルカリエソチングした凹凸基板を使っていく計画である。ただ、凹凸基板では、結晶方位の異なる複数の面が露出しているため、これまで以上に精密な界面制御が必要である。
すべて 2011 その他
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JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS
巻: 50 ページ: 082301-1-082301-4
巻: 50 ページ: 012301-1-012301-5
10.1143/JJAP.50.012301
APPLIED PHYSICS BXPRESS
巻: 4 ページ: 092301-1-092301-3
10.1143/APEX.4.092301
http://solid.pe.titech.ac.jp/