研究課題/領域番号 |
22246001
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小長井 誠 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40111653)
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研究分担者 |
宮島 晋介 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (90422526)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 太陽光発電 / ヘテロ接合 / シリコン太陽電池 |
研究概要 |
太陽電池分野において圧倒的な技術優位を築くため、シリコン薄膜太陽電池技術とバルクシリコン太陽電池技術を融合化した薄型高効率シリコン太陽電池の研究開発を行っている。 ①テクスチャ基板上への高品質ヘテロ接合の形成:光閉じ込めのため、表面に凹凸構造を形成すると光電流は増加するが、一方で、表面にいろいろな結晶面が露出する。このように異なる結晶面が露出している表面をパッシベーションする際、面ごとにパッシベーション効果が異なる。そこで、アルカリエッチした凹凸構造にCPエッチングを施すことにより、凹凸面の形状を制御し、パッシベーション膜形成の最適化を試みた。その結果、初期的ながら17.4%まで変換効率を向上させることに成功した。一方、平坦なSiウェハを用いたヘテロ接合では、アモルファスSiOをパッシベーション膜に用いたSiO系ヘテロ接合により、開放電圧723mV 、変換効率19.1%を達成した。 ②p型nc-3C-SiC/Siヘテロ接合の高品質化:高品質p型nc-3C-SiCを形成するためには、n型nc-3C-SiCの場合よりも多量の原子状水素添加を必要とする。したがってp型nc-3C-SiC/n-Si界面形成時に原子状水素による損傷が非常に大きく、この問題の克服がこの系の性能向上の障害となっていた。本年度、界面バッファ層の形成条件の見直しを行ったところ、キャリアライフタイムを従来の2 msecから4.5 msecまで向上させることに成功した。 ③デバイスシミュレーションによる設計指針の確立: 市販のデバイスシミュレータによりSiウェハの厚さを200ミクロンから100ミクロン、さらには10ミクロンまで薄くしていった場合の開放電圧の挙動を理論解析している。その結果、表面再結合速度を数cm/sまで減少させれば、0.8 Vの開放電圧も得られるとの理論的見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)ヘテロ界面に挿入するバッファ層の形成条件を、キャリアライフタイム測定の結果をもとに最適化したところ、開放電圧が0.72Vを超す、極めて有望な結果が得られた。またキャリアライフタイムから予測される開放電圧は、0.73V以上が得られており、今後、電極などのデバイス周辺技術の最適化により、いっそうの高効率化が可能との見通しが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
Si基板として表面がフラットなウェハを用いると、700mVを超す高い開放電圧が安定して得られるが、反射損が大きくなって光電流は減少する。そこで反射損を減少させるため、アルカリエッチングした凹凸基板を使って光閉じ込めの強化を図っているが、凹凸基板では、結晶方位の異なる複数の面が露出しているため、パッシベーション効果にムラがあり、開放電圧が平坦基板に比べ数10mV減少している。今後は、これまで以上に精密な界面制御が必要である。
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