近年の集積回路における微細化・高集積化に伴い、電子機器の発熱量が増大し熱暴走や素子破壊を引き起こす問題が深刻化している。そこで本研究では、微細電子デバイスに適用可能な、新奇な冷却技術の開発を目的とし、高エネルギー効率な磁気冷凍と純スピン流注入の融合したスピン注入型磁気冷凍技術を提案し、デバイスを試作した。純スピン流は電荷の伴わないスピンの流れであり、微細化のみならず動作電力の省エネルギー化も期待される。 スピン注入型磁気冷凍を実現するためには、①ナノ構造における磁気熱量材料の高性能化、②巨大純スピン流の生成、③磁気熱量材料へのスピン吸収効果の高効率化が必要であり、本研究では、最初にこれら3つの要素技術を確立し、最後に磁気熱量材料のスピン注入による冷却効果を検証した。 ①に関しては、既に開発済みであるので、今年度は、②と③の更なる高性能化を行い、 多端子ナノピラー構造を用いて、4 mA 以上の純スピン流生成に成功し、更に、横スピン吸収と側面スピン吸収を用い、85 %超のスピン吸収効率を実現に成功した。最後に、 Gd 細線への純スピン流注入により、冷却効果に対応していると考えらえれる熱起電力の減少を検出することに成功した。
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